<概説>
謎の人物カプランと間違えられ拉致された広告店員は、殺人容疑をかけられ官憲と謎の組織の双方から追いかけられることに。果たしてカプランとは何者なのか。そして組織の陰謀の正体は。伝説的存在ヒッチコックによる名作サスペンス。
<感想>
ヒッチコック作品はいくつか見てきました。教養として。
その度に「これは教養だわ〜」なんて言いつつも、然程面白いと思ったことはなく。『サイコ』より『鳥』の方がいいと世評の真逆をいくことに。
しかしこれはおもしろい。
ショーン・コネリー版『007』と比較されることもあるそうですが、納得。スパイ映画のプロットとしては現代にも通用するのではないでしょうか。
なにが一番いいかって、最初は怪人物カプランの名前以外何ひとつとしてわけがわからんところです。
スパイ映画なら「だれそれがどういう悪いことをしてるから、だれそれについて調べろ」なんて、観客に指針がある程度与えられることが多いもの。
しかし本作はそれを一切与えない。
訳がわからんなら訳がわからんまま見ろと、主人公ソーンヒルだけでなく観客まで混乱に巻き込まれているようです。巨匠ヒッチコックのテンコ盛りの悪意が実に気持ちいい。
追われて、追って、また追われ、
そんな風に訳がわからないのにスリルは迫ってくる娯楽性。アクションシーンのクオリティもあることながら、サスペンスとして一級品。
50年代最大の傑作という声があるのも納得です。