雨虎

幸せなひとりぼっちの雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

妻に先立たれ、職場をクビになり、ルールに厳格すぎるせいで近隣住民との関係性も悪い。満を持して自殺を決意するも、新しい住民によってことごとく失敗するという序盤は重々しい雰囲気から一転してコメディとなった。
その後のやり取りによって彼の人となりを知っていくことになるが、スウェーデンらしい福祉の要素が盛り込まれているように感じた。

近年、日本では健康と要介護の間の概念、要介護予備軍的な概念としてフレイルという言葉が提唱された。要介護状態は一度なってしまうと回復が難しいが、フレイルは回復が可能だ。これは身体的や精神的なものもそうだが、社会的フレイルもあるとされている。
そういう意味では作中のオーヴェは肉体的には活動をよくしているが、職場をクビになり、近隣住民との関係が悪いという点で社会的な虚弱状態にあったと考えられる。
また、物語が進むにつれ、オーヴェも何も問題がない健康な状態というわけでもなく、心臓疾患を抱えていることがわかった。他に自殺をしようとしているという点でも精神的に虚弱になりつつあるとも見えなくもない。
しかし、これらを解決したのは新しい住民だ。積極的に関わり、偏屈な話の通じない老人ではなく、正直で真面目だが不器用すぎる老人なのだと理解されていった。これにより、周囲の住民との関係が徐々に良くなり、結果的には多くの人に信頼される人物になっていた。
日本は高齢化社会から超高齢化社会となった。理解が難しい相手が少ないわけでもない。しかし、そういった人にも人生があり、その人なりの理屈があるにすぎないということなのだろう。
雨虎

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