雨虎

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦、ナチス、数学者などのいずれかが少し知っていれば聞いたことがある人の多いアラン・チューリング。戦争は単に人の命や街を破壊するだけではなく、経歴すらも破壊する危険性を持っていることがよく分かる作品となっている。

イングランドでは1967年まで21歳以上の同性愛は違法だった。そして、アラン・チューリングは1954年に自殺で亡くなった。ホルモン療法を受けた事自体が既に被害ではあり、今、生きている者の勝手な想像でしかないが、もう少し生きていれば彼もわずかであったとしても救われたと感じられたかもしれないと思うとどうしようもない気持ちになる。

史実が基となっているものの、友情であったり、信念といった形のないものに対しての描写に力が入れられている。そして、力を入れているものは秘密そのものの描写もそうだ。
例えば、アラン・チューリングの同性愛について、スパイ、エニグマ解読後も秘密裏に運用するという行為、アラン・チューリングの経歴といった秘密や、エニグマ解読のきっかけとなった発言のように何かから明るみになると崩れるという秘密の性質といった内容もあった。

何と言っても盛り上がったのはエニグマの解読方法で、基本的には総当たりではあった。3桁の数字のパスワードを000から999まで全て読み込ませるという比較的原始的な印象を受ける方法であるものの、"wetter"と"Heil Hitler"というたった3単語、7種類の文字だけで解読という手法を発見したという場面は鑑賞していて同じように興奮していたように思う。

「私はなんだ?」と質問するシーンがあるが、これはチューリングテストの人か機械かを判定するテストをセリフに投影している。
アラン・チューリングはある側面で見ればナチスを打ち破った英雄ではあるが、ある側面で見れば多くの殺人に加担した人物とも見て取れる。戦争とはそういうものではあるが、単純に戦争だから仕方ないでは終わり難い。
そういった意味ではこの映画は善悪とは何かというメッセージも込められているように見える。法律上は問題がなくとも個人の倫理観によって罪悪感が生まれることもある。それでも自分で選んで決める必要がある場合もあるという難しさも密かに描写されているようにも感じる。
雨虎

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