雨虎

ドラえもん のび太の太陽王伝説の雨虎のネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

この作品はドラえもん誕生30周年記念作品というだけあって、特に丁寧に作られているような印象を受けた。舞台であるマヤナ国はマヤ文明やアステカ文明がモチーフとなっているようで、建造物や儀式、服装などが丁寧に描かれていている。
これは個人的な印象でしかないが、レディナの手下で動物使いのヤフーが巨大なワニに乗っている姿は大蝦蟇に乗る児雷也と重なった。

物語としては『王子と乞食』がモチーフになっているとされる。全く出自が異なる男児が出会う。双子のような同じ顔でありながら、身分が全く違う。そこで入れ替わって過ごすことを思いつくという物語だ。しかし、民衆と話したことで現実を知る王子。王宮の制度の虚しさを知る乞食というそれぞれの生活について知る。
『太陽王伝説』でも入れ替わり、お互いの生活について学ぶ展開が続く。だが、考え方も性格も違うことでトラブルもある。ティオも棒術の稽古をしてもわざと負けるなどのよくない気の遣われ方をしている等、丁寧に重ねてはいる。

この作品ではのび太の優しさが目立つ。瓜二つのティオは比較して傲慢に見えるが、結果的にはそういう人物ではなかった。
先代の太陽王が偉大すぎ、自身との差がコンプレックスで、少しでも強くあろうと、自分も他人も厳しくして先代に近づこうとした結果だったのだろう。あまりにも不器用すぎる。
そういった人物であったからこそ、イシュマルやククらがずっとついていたのだろう。

イシュマルは途中、崖から落ちてしまうが、ジャイアンはそれを助けられなかったことを悔やんでいる。2作前にのび太の手を離してしまった後悔から、ベティの手を離さなかった。そして今回は手を掴む間もなかった。ジャイアンの立場からするととても悔しい場面だったはずだ。そのため、その後のロラースケートの場面ではしゃいでいるのは個人的に疑問だった。

終盤、レディナとのシーンではのび太とティオが力を合わせて倒した。槍術でもひみつ道具でもなく、二人が初めて協力したサカディのように、水晶ドクロを蹴ってぶつけることで倒した。良い場面だった。
王子のキスで目覚めるという『白雪姫』に重ねた場面も冒頭の布石が活きた結果となった。ドラえもん作品では珍しいキスであるが、その後に王子が二人いることで再び気絶というギャグ展開も面白い空気感だった。
雨虎

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