ピンクマン

幸せなひとりぼっちのピンクマンのレビュー・感想・評価

幸せなひとりぼっち(2015年製作の映画)
4.6
凍てついた心の孤独な老人が隣人との交流で少しづつ人間味を取り戻してゆく、そんな中で語られる過去、少年時代の父との思い出、妻との出会い。それは観客にも鮮烈で、オーヴェの不器用な純情ぶりにも心打たれるし、妻役の女優さんがとても魅力的で、地味な映画なのに彼女が出てくるシーンはそのファッションとも相まって、これは計算されているのだろう、彼の人生のすべてである妻の魅力に大きな説得力がある。二人の初めてのキスシーン、これが泣ける…なんという純粋さと美しさ。対比する二人を襲った不幸な出来事と再生。そういったことすべてが現在のオーヴェという人物を単なる頑固爺さんではなく心の深さを持っているはず、というベースになっている。

人は心を閉ざしたまま生きられない、人との関わりの中で喜びも悲しみもあるのだ、という当然のことを描いているのだが、とにかく良い、素晴らしい作品に仕上がっている。ときどき観ている自分の人生を一段高みにあげてくれるような、素晴らしい映画に出会うことがあるが、あまり期待せずに鑑賞し始めた本作がまさにそうだった。

ヒューマンドラマの傑作。
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