本作品の舞台は、突き抜けるような青空とこじんまりとした団地のコントラストが印象的なスウェーデンの片田舎。
その団地に住むオーヴェが主人公。
この主人公、ルールに厳しく、怒りっぽくて、ところ構わず怒鳴り散らす、かなりはた迷惑な男である。
そんな男が団地内で孤立し、長年勤めた鉄道局もクビになり、いよいよ現世に絶望し、自殺を決意するのだが、そのくだりが
毎回滑稽な結末で まるで喜劇を見ているかの様。
つい笑ってしまう。
そして作品に散りばめられた、素敵な思い出のシーンたち。
こんな忘れ難い、美しい想い出を抱えたまま生きていくのもさぞ辛いだろうな…などと思い、生より死を望む彼の気持ちも分かる気がしてきたりする。
仮に本作品のテーマが『人は独りで生きられるか?』という問いかけだとしたならば、答は作品中に示されているのだと思う。
『人は一人で生きられるが、独りでは生きる意味はない』と。
そんな事を思わせてくれるハートフルでほっこりする良作だった。