猫脳髄

ファイブ・バンボーレの猫脳髄のレビュー・感想・評価

ファイブ・バンボーレ(1970年製作の映画)
2.9
マリオ・バーヴァのお洒落ジャッロ。と言っても、企画段階ではバーヴァは参加しておらず、予定していた監督が降板したため、急きょ御大が登板することになったそうだ。バーヴァは脚本がアガサ・クリスティ(「そして誰もいなくなった」)の剽窃であることを懸念したが、脚本の修正が間に合わず、いくつかのシーン追加(※)と前金で納得せざるを得なかったとか。

裕福な実業家が保有する孤島の別荘に集まった3人の実業家と科学者、そしてその妻たち。実業家たちは科学者が開発した化学物質の「公式」を手に入れんと工作する。癖のある妻たちの思惑も絡むなか、別荘の使用人の死体が発見され…という筋書き。クリスティとは枠組みが類似するにせよ、脚本は実に粗い。

ビヨンビヨン動くクロースアップなどお馴染みのカメラワークや見事な美術と衣装、ピエロ・ウミリアーニの軽快な劇伴と確かにバーヴァの刻印は伺える。しかし、脚本が致命的で、核心に関係するある登場人物の設定があやふやなまま終幕するなど、ミステリとしてはかなり欠陥がある。ジャッロらしい血みどろもほとんど封印し、本格派に臨んだがあえなく失敗してしまった。

※「冷凍庫」と「エピローグ」が主な追加シーン。そこはさすがの見識である。あとは、ひっくり返ったテーブルから零れ落ちるガラス球を追って、らせん階段を経た先の浴室に死体!というシークエンスは素晴らしい
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