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不安は魂を食いつくす/不安と魂のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

4.1
「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」でクセある作風だと思ったファスビンダー。こちらは中年女性と歳の差ある外国人労働者の美しくも悲しい純愛をストレートに描いていました。エミが輝いていく恋の魔法。モロッコ人のアリは優しい。都会で寂しさを抱えた二人が出会い、障害を乗り越えていく物語でした。タイトルのように二人は厳しい現実の中で苦労もこの先続くだろうけれど、永遠の愛で結びついた二人は今幸せなのだと、静かな余韻を残しました。

構図がすごくおもしろい。カメラワークに目がいきました。鏡を使ったり、斜めから撮ったり、空間に奥行きを与えることで臨場感を生み出しています。

オマージュと言われている「天はすべて許し給う」よりリアリティーを感じたのは、周りの反応です。最初は外国人労働者となんて、と蔑んでいた人々も、だんだんと慣れてくるし、偏見のない人もいる、ビジネスで割りきる人などさまざま。子どもたちも少し反省する。時間の経過を入れて現実感を加味しています。

最初は周りの反応を極端に描いたのかもしれないのですが、70年代のドイツもまたホモジーニアスな文化で、「外国人(移民)」への差別が酷いです。名字、肌の色、言葉、その辺りの差別の描き方が詳細でリアルに感じました。心がヤスリで削られるようでした。

二人のダンスシーンに癒されます。魂が結びついた二人を誰も引き離せません。

70年代、ベルリンの壁が歴然とあった時代の西ドイツ。コーラにみるアメリカ文化の浸透。大手資本家の台頭、物価高、不景気で、ヒトラーの時代の方がドイツ人市民には豊かな時代だったような表現でした。格差広がり、移民への風当たりが強かったのがわかります。

ファスビンダーの知的に計算しつくされた構成にドイツを感じました。

ところでFilmarksのあらすじって誰が書いているんですかね。
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