Kaito

イングロリアス・バスターズのKaitoのレビュー・感想・評価

4.8
前から気になっており、今回Amazon primeにて安くでレンタルできたので、鑑賞。クエンティン・タランティーノ監督の7作目の長編作品。タランティーノ監督にしては珍しく戦争を題材とした作品。戦争を題材にしているが実際のところはエンターテイメント要素が強い作品であると言えるだろう。ナチスに家族を殺された女性の復讐と、アメリカ、イギリスのナチスに対する攻撃とが同時に進んでゆく。映画は全部で5つの章からなり前述の2つの物語が同時並行して進んでゆき、最終回には両方の話がくっつく形でフィナーレを迎えるという構成。同じ時代の有様を複数の異なる視点で描くという構成とその複数のストーリーを巧みに絡ませるという技術の秀逸さはさすがタランティーノ監督である。メインはおそらく女性の復讐であるがその復讐の仕方もかっこいい。自分が営んでいる映画館に自らの敵を入れてそこで映画のフィルムごと映画館を爆破する。この行為は彼女にとって「映画」との心中と言っても良いような行為ではないだろうか。家族を殺された宿敵は本来なら自分の営む映画館には入れたくないはずである。しかし彼女の中では復讐が勝ったのである。燃え上がる映画館の中でナチスの人々が死んでゆく様は見ていてこちらまで心を動かされてしまった。また女性が撃たれて死ぬシーンも印象的だった。撃たれた瞬間をスローにして感動的な音楽を流すという演出。撃たれているという悲劇的なシーンであるはずなのに感動を超えて美しさまで感じた。相変わらずタランティーノ監督は「見せ方」が上手いなと感じる。私がこの作品で1番印象に残った人物はずばりランダである。演じたクリストフ・ヴァルツの演技が素晴らしかった。特に序盤のラパディットに尋問するシーンは見ものである。彼の不気味さ、言語化を許さない威圧感、本当の感情を全く顔に出さない様子、私欲のためならばすぐに寝返ってしまうという性格など全てが良かった。この映画の良さは彼なしでは語れないだろう。前に書いたトレーニング・デイと同様にやはり映画の良さは悪役の良さに大きく左右されるのである。タランティーノ監督の作品からは毎回「映画の自由さと可能性」を感じられるので見ていてとても楽しいし満足度が高いと感じる。正直言って彼の映画はやりたい放題でめちゃくちゃである。しかしそこには「映画の自由さ」というものが確かに存在し、その自由さから来る可能性というものもまた確かに存在する。そのような意味でも彼の作品では映画を楽しむということの本質を体感することができると考える。これからも1人のファン、そして何より1人の鑑賞者としてタランティーノ監督の作品の「自由さと可能性」を楽しみたい。
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