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飢餓海峡のundoのレビュー・感想・評価

飢餓海峡(1965年製作の映画)
3.9
嵐の海を越えたもの。

過去の名作を日本公開日順に観ていく「名作巡りの旅邦画編」51本目。
日本公開日1965年1月15日。

内田吐夢監督。
原作は水上勉の同名推理小説。
戦後の混乱期に北海道岩内町で起きた強盗殺人事件。折しも、その日は台風の影響で青函連絡船が遭難・沈没するという大きな海難事故が発生した日。不思議なことに回収された遺体は乗客数よりも2つ多かった…。

原作が推理小説といっても、本格ではなく社会派の方。
犯人や犯行方法を推理することよりも、動機や人間模様を味わうドラマ作品。

182分とボリュームたっぷり。
正直、筋書きだけで言えば、火曜サスペンス劇場などのテレビドラマでもやってそうな内容なのだけど、それらと余韻の深さが断然に違うのは、この長さをたっぷり使った深い描写と役者の名演ゆえ。

この余韻は、文庫本一冊の読後感に近いものがある。もちろんなんでも長ければ良いというものではないのだけど、この手の作品の持つ魅力を表現しようとすると、本来、これくらいの時間は必要なのだなと感じてしまった。

役者陣の入魂の演技が光る。三國連太郎も凄いけど、本作は左幸子あってこそだと思う。娼妓に身をやつしながらも、純真な心を持ち続ける魅力的な女性を情感たっぷりに演じた。そして健さんが若い。

戦後まもなくの時期から、その後のある期間まで、貧しくて混乱もしていたけれど、どこか活気のあった当時の空気に包まれた良作。



名作巡りの旅次回 「赤ひげ」
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