プペ

ゴーン・ベイビー・ゴーンのプペのレビュー・感想・評価

ゴーン・ベイビー・ゴーン(2007年製作の映画)
2.8
静謐さに満ちた空気と一つ一つのシーンの重量感、そして作品自体が有しているテーマ性。
幼女誘拐事件を捜査する私立探偵の姿を追ったミステリーの体裁を取りながら、観る者に強く訴えかけるテーマ性を孕んでおり、イーストウッド作品にも引けを取らない重厚な映画、それが本作だろう。

結論から言って、犯人たちは″誘拐″という手段を取らなくとも少女を救う方法はあったと思うが、母親が逃亡を図っていたという緊急性から止むを得なく犯行に手を染めたのだろう。
彼らの行動の正否はまた、男児の誘拐殺害犯を義憤から射殺した主人公の決断の正否にも関わってきて、果たして「子供の未来」や「法」や「正義」とは何なのか?何が正しく何が間違っているのか?といった、恐らく答えなど出ないような問題を我々に真摯に突き詰めてくる。


映画を観終え、ソファにぐでんっと身体を預けながらいつものように天井を見上げ、余韻に浸る。
その間ずうっと言葉にならない感情がこびりついて離れない。
その感情が、この映画の主人公に対する″怒り″なのか、または″悲しみ″なのか、まったく別の何かなのか、判別がつかなかった。

あの少女が老人の愛情の元で育てられるのがいいか、養育能力のないジャンキーな母親の元で育てられるのがいいか。
間違いなく少女にとっては不幸な選択だったと確信するが、主人公が責任を取れるわけもない。
中途半端な遵法精神と正義感を振りかざした頭の堅さで、彼は何人もの人間を不幸にした。
それで″正しいことをしている″と信念を持っているところが、悪人よりも始末が悪い。
離れていった彼女にはただただ共感し、画面越しながら親指を突き立てたほどだ。



この″惨い″映画に安直な答えも救いも無い。
あるのは、主人公が下した青臭く薄っぺらい「正義」の犠牲になった少女の薄暗い「未来」だけだ。
プペ

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