Kamiyo

グラディエーターのKamiyoのレビュー・感想・評価

グラディエーター(2000年製作の映画)
4.2
2000年 "グラディエーター" 監督リドリー・スコット
第73回アカデミー賞作品賞 主演男優賞(ラッセル・クロウ)

冒頭の西暦180年-200年(日本は弥生時代)ゲルマニア(現在のドイツからチェコ、ポ-ランド方面)でのローマ軍団の蛮族との戦闘シーンは永遠に語り草になる程の素晴らしさ

ラッセルクローの雄々しい演技とアクションは大変に見応えがある。
とにかくホアキン・フェニックスがすごい。
独裁者と言うよりも異常性格者としての面が色濃く描かれている新皇帝のコモドゥス(ホアキン・フェニックス)。
皇帝アウレリウスである自分の父に愛され、兵士たちにも人気のあった将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に対しての妬み、憎悪が頂点に達したとき、彼は密かに、自分の父皇帝アウレリウスを殺害し、マキシマス抹殺を命じたうえ、マキシマスの最愛の妻子までも無惨にも殺してしまう。

奴隷になったマキシマスの闘技場での戦いが繰り返し描かれ、映画は血みどろの剣戟の連続です。
その戦いの中で、マキシマスのただ強いばかりではなく、指揮官としても有能で、しかも、慈悲深い面が描かれ、共に戦う仲間の信望を集めていく様が描かれ、これが、卑劣な皇帝・コモドゥスとの、対比になって行くのですが・・・個人的には、コモドゥスがその人望のなさ故に孤立して行く様が描かれるとよかったように思います。

一見この作品は史実に基づいているようだが、ほとんどフィクションと考えて差し支えない。いわゆるパックス=ロ-マナ(ローマの平和)後期、五賢帝時代最後の皇帝であるマルクス=アウレリウス死後は、約100年にわたって戦乱の時代となり、エンディングが示唆する平和は来ない。
本作で登場するマルクス=アウレリウスとコモドゥスの存在は確かだが、アウレリウス帝の暗殺もコロセウムでの闘いもない。
どこまで歴史的な整合性が取れているのかどうかは分からないが、それでもなおラストのマキシマスとコモドゥスの決闘は、鬼気迫るものがあった。
それまでじわじわ湧き上がってきたコモドゥスへの同情や共感が、あのシーンでコモドゥスが殺されることでカタルシスへと昇華する。
『椿三十郎』に影響を受けているんだろうか?それに通ずる美学がラストの決闘から感じ取られました。

リドリー・スコットという監督の良さは圧倒的に芸術性が高いのにそれに負けずとも劣らないエンターテイメント性の高さを内包しているという事。
リドリーらしい迫力のある映像で、美術も衣装も撮影も良く出来ていた。最初のゲルマン族との戦闘も生々しいし、コロセウムで戦車部隊を相手に剣闘士部隊を指揮して戦う戦術もしっかりと描かれていて何故勝てたかがわかるし、虎なんてよく登場させられたものだ。コロセウムの戦いの場面は、大作「ベン・ハー」よりもさらに素晴らしい。

ホアキン・フェニックスがリバー・フェニックスの弟としったのは観終わってからしばらくしてからで、思い返せば確かに似てるなと。
リバーほどの繊細さはないが、骨太な俳優として期待している。
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