Kamiyo

宗方姉妹のKamiyoのレビュー・感想・評価

宗方姉妹(1950年製作の映画)
3.8
1950年”宗方姉妹”監督 小津安二郎
脚本 野田高梧 小津安二郎
原作 大佛次郎

1950年(昭和25年)占領下の日本、戦後押し寄せる新しい波と古くから美徳とされた伝統がせめぎ合い。

冒頭、いきなり斎藤達男の「煙草と癌」についての話で、笑わします。この当時から、そーゆー話って在ったんだねその後、すぐに忠親(笠智衆)と宏(上原謙)が、美味しそうにプカプカやってます。。。。。
そこへ子猫ちゃん、妹・満里子(高峰秀子)の登場です。
この高峰秀子が、抜群にイイ!
小津さんの映画では、定番の「引っ掻き廻し役」なんだけど、それだけに収まらない凄さ
新聞紙の投げっ放し、舌をぺろっ!それだけじゃない、セリフ廻しの痛快さ!
「スゲーな!・・・すごい、すごい・・・」
「まりこ、わかってんだ!満理子、知ってんだもん!」
「飲め、飲め!特攻隊!・・・飲め、プロペラ!!」
もー、セリフの一つ、一つが痛快で、面白い。
後半のダメ夫、山村聡に対する啖呵みたいな喋り方にも笑った。

夫婦間の軋轢、昔の恋心の再燃などが描かれていく。姉で妻節子(田中絹代)は仕事の無い夫・亮助(山村聡)にも文句も言わず、ただじっと耐えている古いタイプの女性を抑えめに演じている。
しかし、夫・亮助と結婚する前に好意を抱いていた宏との再会で心が揺れ動く。

そんな姉・節子を見るに見かねて行動を起こす妹・満里子。自由奔放に生き、男性にも積極的な新しいタイプの女性を快活に演じていて小気味良く、愛嬌を振り撒く。
すぐ舌を出すのが癖なのだが、これを父・忠親(笠智衆)にからかわれる冒頭のシーンは、困ったような表情が実に可愛らしい。姉の日記を盗み読むのはいただけないが、その内容の語り方が講談調で笑いを誘う。

節子の昔の恋の相手・田代は、おとなしそうでかなり好人物な印象を与える。それとはこれまた対照的に、節子の夫・亮助はかなりの悪役だ。その世を拗ねたような態度は、観ていて実に癇に障る。椅子に座る足の先だけ画面に映し出されているショットが目立つ。小津の作品では登場人物は正面を向いてしゃべるのが特徴的だが、この亮助は横を向いて話すことが多い。意図的にそうしている訳だが、この亮助の屈折した性格が巧みに伝わってきて本当に感じ悪い人物に思える。
どうしてそんな男になってしまったかは、失業中の身であることも理由であろう。そして満里子の憶測する、節子の昔の日記に気付いたかについては明確には語られない。

なんという結末でしょうか。
夫婦のことは他人にはわからないところがありますが、
夫を信じて尽くしてきた奥さんが夫から信じてもらうことができず、夫は何も語らず死んでいく。
虐げられた夫が亡くなり自分の気持ちに正直になって昔の男のところへ行くのかと思いきやこれまたお互いが好きあっているにも関わらず女性の方から去っていく。
この作品誰もが幸せになれてない気がする。
なんとも言えない結末ではあったがその中において宏と満理子とのやりとりにユーモラスな部分があったり節子と満理子の姉妹のやりとりの中に正反対の性格の違いが見て取れたり

高峰秀子、本当に可愛いっす!
その存在がこの作品の中で明るさをもたらしている。
お父様に叱られては、舌をぺロッと出す仕草を見ちゃうと
心が表れますよ!また上原謙に講談調で喋る高峰秀子には笑ってしまった。こういうシーンの多い

節子はさまざまな所の出没をする.奈良のお寺であれば薬師寺に,京都の御所を通り抜け,東京は銀座らしきバーを営み,日比谷の野音なども見聞している.
ラストに高峰秀子と田中絹代が京都御所の塀沿いをふたりで並んで道を歩く場面、斜め後ろからのカットをみると、きれいに足の運びがシンクロしてるんですよ。
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