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アングスト/不安のeyeのレビュー・感想・評価

アングスト/不安(1983年製作の映画)
3.7
ANGST(1983)

時は1980年

オーストリアで実際に起こった殺人事件をインスパイアした映画

現在も刑務所で存命中とされる殺人鬼ベルナー・クニーセクによる一家惨殺事件

それをある意味まんま再現している

約1時間半の映画の大半は至ってシンプル

「殺人行為」「無慈悲の暴力」

これらを視覚的に追体験させられる

主人公Kの抑えがたい殺人衝動をナレーションで淡々と語っていきつつ

疎外感や不安感も描き出していく

複雑な家庭環境
幼少期虐待・性倒錯
動物虐待からの殺傷
老婆に対する衝動的な拳銃殺傷
自分の家族に対する復讐心

あらゆるものがぐちゃぐちゃに混ざった結果のパーソナリティ形成とも思える

人目のつかない場所で殺人を犯すべく

たまたま 目をつけた一家への殺害衝動をたぎらせる

サイコパスの歪んだ心情・暴力・不穏・シュール・滑稽 それぞれが入り混じりつつ

非常にクラシカルな映画でもある

そして観終わった今改めて思うのが

例の「犬」

映画では既にネタバレされているように
この犬の可愛らしさに狂気がいい感じに薄まって「救い」「安らぎ」が出てくる

実際の事件では犬でなく「猫」

「目撃されるのが嫌だった」という理由で一家と共に殺害されてる

殺人鬼の異様な高揚感を描くにあたって
興奮してる感情を極限まで抑え込みつつ

一方でそれを爆発させるように衝動性を存分に発揮して自己欲求を満たしていく

一見 計画性を持っているようにみせて皆無

慈悲深そうな行動の裏にひたすら利己的心情

殺人衝動を満たし続けていく残忍さ

疲労感や徒労感を感じさせつつの活性化

本能の赴くまま理性もない様子で欲望に忠実に生きている

人間の感情や理性は経験による所も大きいとは思うけど

「無慈悲な感情」
「殺人衝動」

これらは明らかに前頭葉の器質的なものとも思える

有無を言わせないし 容赦ないと思う

非常に病的で非常に危険

快楽主義者の始終を観ることができる

「車のトランクに詰めた遺体を発見されたとき発見した人物がどんな表情や感情なのかを想像するだけで興奮する」

って考える そんな人物は 普通存在しない

興味があって観る人がいるのも事実だけど

気をつけた方がいい

この快楽殺人犯は確実に思考がおかしいから
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