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稲妻のnt708のネタバレレビュー・内容・結末

稲妻(1952年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

成瀬巳喜男・高峰秀子・林芙美子・田中澄江のタッグはやはり最強。映画を観てきて初めて凄い映画に出会ったと思ったのが『放浪記』で、そのタッグがもう一度観られるとなれば、その機会を逃すわけにはいかない(まあ、製作された順番はあべこべなのだが)。

今回は異父兄妹4人と4人を育ててきた母が貧乏暮らしに大いに振り回される話。兄妹はそれぞれ僻みあっており、高峰秀子が演じる主人公は特に自分の出生に対して不満を持ちながらも、その不満を殺して生きてきた。「私は人生で一度だって幸せと思ったことはないわよ」という台詞が何よりの証拠だ。

しかし、こうした主人公の想いと裏腹に母は自分たちの子どもを不幸せにするために生んだのではないと言う。ここで観客はどちらの想いにも共感させられ、どうも胸騒ぎが止まらなくなるのである。そうしたやり取りをしているときに突如現れる稲妻、、そこから前を向いて生きていこうとする母と娘の姿が映し出される。ああ、何という終わり方。本作だけでは何も解決しちゃいないのだが、これから先、何か良いことが起こるのではないかという予感を起こさせるのが素晴らしい。

成瀬の映画はどんなにひどいことがあっても、最後に何らかの救いが残されているため、観ていて安心させられる。それは恐らく、成瀬の人柄あってのことだろう。もし本当にそうだとしたら、映画はやはり人柄が出るものなのだ。
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