nt708

グッド・ウィル・ハンティング/旅立ちのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

スマホひとつでどんな情報にもアクセスできてしまう現代。あらゆることを知ったつもりになって、実は何も知らないウィルのような人間がこの世にどれだけいるだろうか。知識として持ってはいるが、それを実際に感じたことがない。言い換えるなら、自分のフィルターを通したことがない。だから、話しが面白くない、説得力が無い。ああ、そんな人、周りにもたくさんいるなあ。自分もそうかもしれないなあ。そんなことを考えながら、観ていた。

精神分析を扱いながら、主人公の過去を探り、物語を展開させるという手法は他の映画や演劇、小説においても頻繁に見られる。貧しい出自と恵まれた才能のコントラストを描くのも良くある話だし、そういうステレオタイプ化されたキャラクターはこの時代だから成立したようにも感じる。構成においても、「ふたりあるいは複数人での会話→ひとりになったときの沈黙」というシーンの繋がりが続き、全体的にメリハリが感じられない。

それでも、本作が素晴らしいのは登場人物ひとりひとりの暗部を見下すことなく、丁寧に寄り添い、理解しようという姿勢が感じられるからだろうか。もちろん、人間同士、全てを理解することなど不可能である。自分自身が何者かを理解することも難しいのだからなおさらだ。それでも、相手を理解したい、理解されたい、そうやって誰かのために生きる欲求こそ人生を真に豊かにする秘訣なのかもしれない。そう思わせてくれた。

こういう優しい映画がこれからも作られていってほしいものである。
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