初めてアメリカで公開されたドイツ映画(二番目は同年の「カリガリ博士」)。ルビッチ監督のドイツ時代の代表作で、エミール・ヤニングスの出世作。原題は「Madame DuBarry(デュバリー夫人)」。フランス革命時代のフランス国王ルイ15世の愛人デュバリー夫人の数奇な運命を映画化。
18世紀後半パリ。帽子屋のお針子ジャンヌ(ポーラ・ネグリ)はアルマンという誠実な恋人がいるにも関わらず贅沢に憧れて次々と貴族の愛人になる。やがて国王ルイ15世(エミール・ヤニングス)に見初められ、公妾となるために形式上デュバリー家に嫁ぎ貴族の一員となる。一方、アルマンはジャンヌが公妾となったことにショックを受け、革命派の一員として戦いに身を投じていく。。。
衝撃的なトラウマ映画だった。個人的には「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(2000)を上回るダメージを受けた。前半は後のルビッチ監督作のような艶笑コメディ風なので尚更ショックが大きかった。“善と悪を区別しない”デュバリー夫人ことジャンヌの悲劇は充分に伝わってきたが、当時「フランス革命を侮辱する表現」と批判が出たのも無理はない。
セットや衣装はゴージャスでフランス革命時の群衆シーンは迫力があった。本作を観たアメリカ批評界がルビッチ監督を“フランスのグリフィス”と称したのも頷ける。同年のグリフィス監督は不寛容がもたらす残酷悲劇「散りゆく花」(1919)を撮っているが、本作は人間の愚かさを描く残酷喜劇のように思われる。そのドライさはドイツ的なのか、先進的なのかどうかはさらに考察が必要だ。
ラング監督やムルナウ監督がキャリアをスタートさせたドイツ表現主義の黎明期に、本作のような大作ドイツ映画をルビッチ監督が手掛け国際的名声を得ていたことを今更ながら知ることが出来て良かった。ドイツ・サイレント期のルビッチ監督作は他にも有名作があるのでさらにチェックしたい。
※本作のレビュー欄の大半はメル・ギブソン監督の「パッション」(2004)と間違えているようなので要注意。