エリオット

その場所に女ありてのエリオットのレビュー・感想・評価

その場所に女ありて(1962年製作の映画)
4.4
鈴木英夫監督⑦

1962年に製作されたハードボイルド・ビジネス女性映画。

広告代理店西銀広告の矢田律子(司葉子)は入社7年目、男勝りの営業BG(ビジネスガール)(当時はまだOLという言い方もなかったらしい。)。髪はショートで社内で煙草はスパスパ、アフター5は男性の同僚と雀荘で麻雀したりする。何をやっても仕事が続かない若い夫(児玉清)を繋ぎとめるために金の無心にくる情けない姉(森光子)たちの面倒も事実上彼女が見ている。
社内の女性たちも、仕事は猛スピード、男言葉で喋って上司も叱咤する「幹事長」(大塚道子)、同僚や上司に金を貸して利息を稼いでいるバツイチ久江(原知佐子)、他の女と出て行ったのに病気になってのこのこ戻ってきた男に貢ぐため借金で首が回らない「コマンチ」(水野久美)など個性派ぞろい。
あるとき取引先の製薬会社で新薬の広告を受注するためのコンペが開催され、そこで律子はライバル会社のデキる営業マン坂井(宝田明)と知り合い、社内の男性とは違いお互いを対等に認め合おうとする姿勢に惹かれてゆくのだが…というお話。

同じような業界ものとしては海外ドラマの「マッドメン」が思い浮かぶがが、50年以上前にこの日本でそれも女性を主人公にしてこのような映画が撮られていたことがすごい。

女性がキャリアを重ねる際の過酷な状況については現在とほぼ変わりなく、それゆえ物語的にはかなり苦くて切ないところも多いが、この監督の特徴らしくウエットにならずにクールかつドライに事態が展開し、主人公がタフに前に進んでゆくところがいい。

司葉子の「凛々しい」表情、「毅然とした」佇まい、「颯爽と」歩く姿が本当に美しいので、是非ソフト化してほしい1本。
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