<概説>
敵の前線を奪取しろという無茶苦茶に、昇進という餌によって釣られた将校。そんな彼等の我欲に振り回されるのは、いつだって最前線の兵士だった。鬼才キューブリックによって描かれた、理不尽を突き詰めた反戦映画の金字塔。
<感想>
人は死ぬ。
蟻は生きる。
兵士は小鳥の囀りで涙する。
将校は豪奢な舞踏会を貪る。
大義を振り回しながらも、結局一部高官の都合によって運営される戦争事業。その理不尽に反抗する一点において、本作は間違いなく傑作であります。
しかし本作の一番素晴らしいところは、キューブリック監督であるからこそこれほどの名作となった点でしょう。
『バリー・リンドン』や『ロリータ』で見られる監督の贅沢映像への手腕。これがあるからこそ兵卒達が虫ケラ以下であるときちんと理解させられる。
戦場で泥に塗れる兵士達のことなど、左団扇の将校はお構いなし。彼等は豪奢な建物の中で、恥をかきたくないから誰々を銃殺しろと命令すればいい。
ああ憎らしいですね。贅沢は敵と唱える連中が。
こうも感情が揺れると作品が露悪的なのは気になります。ただ反戦・戦争映画って、そんなものであるべきではないでしょうか。