プペ

ウルフクリーク 猟奇殺人谷のプペのレビュー・感想・評価

2.9
本作は、オーストラリア産の「悪魔のいけにえ」と言われている。
たしかに共通する部分や影響を受けた要素は見え隠れするものの、単なる″亜流″で終わるような映画ではなく、″模倣作品″でもない。
犯行の動機、目的、原因など一切不明。
突如現れた正体不明の狂人(シリアルキラー)を描いた作品だ。

物語の中盤までは男女3人の若者が意気投合し、激安の中古車でオーストラリア大陸横断の旅をする、といった青春ロードムービー的な色合いで話が進行する。
これが中盤からの作風転換で、より身近で生々しい恐怖、リアルな残酷・残虐性を際立たせることとなる。

意表を突く「変貌」、尋常でない「狂気」、残虐な「行為」、理不尽な「暴力描写」、嫌悪感を抱く「作風転換」、緊迫した雰囲気が漂う「展開」など、不快で苦痛に満ちた殺人鬼の凶行ぶりと粘着系の演出が秀逸。
バックパッカーや観光客を餌食にする「ホステル」を思わせる拉致・拷問系の映画とも言われているが、実は本作の影響を受けている作品こそが、「ホステル」なのである。
さらにグロテスクな描写表現はあるが、スプラッター色を極力抑えた作りとなっている。

特異な存在感を放つ狂人殺人鬼ミック・テイラーに扮するジョン・ジャラットの怪演ぶりも凄まじい。
相手の体の自由を奪うため、ナイフで脊髄を切断する手口が陰惨。

奇妙なユーモアと、残虐性を併せ持つ(陽気な笑いと冷酷無慈悲な所業)カリスマ殺人鬼として、以後人気を博し、続編「ミック・テイラー 史上最強の追跡者」では、格段にパワーアップしている。


土地に存在する磁場の影響によって引き起こされる突発事故、未知の脅威、逃れられない呪縛にかかり、″猟奇的な殺人鬼に追跡される″という恐怖を見事に表現した良作だろう。
オーストラリア屈指の壮大な景観と衝撃的なクライマックス、絶望的なラストシーンは忘れ難い。

ともあれ″お口直し″は絶対必要。
近々、名作「悪魔のいけにえ」シリーズと「テキサスチェーンソー」を観直そうと心に決めるには、充分な映画だった。
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