爆裂BOX

アカシアの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

アカシア(2003年製作の映画)
3.4
施設から養子を貰う事にしたミスクとドイル夫婦。ジンソンという名のその少年は、毎日庭のアカシアの木の傍で奇妙な行動をとり始める。そんなある日、彼が突然姿を消してしまい…というストーリー。
養子を引き取った夫婦に降りかかる恐怖を描いた韓国産サスペンスホラーです。
子宝に恵まれず、養子縁組を決意するミスクとドイル夫婦。向かった施設で奇妙な木の絵ばかり描く少年ジンソンに興味を持ったミスクは彼を引き取るが、ジンソンは庭に生えた花も葉もつかないアカシアの木に執着し不可解な行動をとる様に。そんな中、思いがけずミスクが妊娠し、血の繋がった子供が生まれると同時に奇妙な行動をとるジンソンを疎ましく思うように。ある日、叱られたジンソンは家を飛び出し行方不明になる。それを機に夫婦にも溝が生まれていき、という内容です。
養子として引き取った子供が不気味な行動をとるようになるという展開は韓国版「エスター」という感じですが、ジンソンが失踪してからは心霊物とサイコ・スリラーを合わせた様な展開になっていきます。ホラーとしては雰囲気や物音で怖がらせようとする類で、派手なシーンも無く静かに進んでいくんで怖くはないんですが、悲しすぎるストーリーが強く印象に残ります。
登場人物が殆ど共感や感情移入できない人達ばかりでしたね。少年ジンソンはムンクの「叫び」みたいな絵を描いたり、庭のアカシアの木に執着を見せてその傍で過ごしたり、木を母親だと言い始めたり、生まれた赤ん坊の口塞いだりペシペシ頭叩いたりと不気味な行動取りますが、それでも最後まで見たらこの子が一番可哀想な被害者でしたね。詳しい過去は語られませんが、不幸な境遇で施設に引き取られることになったのは想像できますし、異常行動もそのせいかもしれないと思えます。初めは無表情だった彼が徐々にミスクとドイルに笑顔見せていく所は自分の居場所を見つけられたんだと感じさせますし、だからこそ実子が出来て疎まれてまた元の様になっていく所は胸が痛みました。
主人公のミスクとドイルは子供引き取る資格ないクズとしか思えませんでした。養子引き取るのは実子以上の愛注ぐことが必要だし相当な覚悟も必要なのに、ジンソンの事も理解しようとしないし、実子が出来て不用意に電話で「子供を施設に返すのは大変なのよ」とか言ってジンソンに聞かれる所は最悪すぎる。夫のドイルも産婦人科医なのに妻が妊娠できる身体なの分からずに養子縁組しようって言いだしたんかい。しかも後半になるにつれて家庭内レイプしたりする鬼畜になっていきますし。ミスクの母親が元凶と言っていい鬼クソババアで、最初から養子のジンソンにいい顔しませんし、実子が出来てからは余計に辛く当たりますし本当にクソ。だから呪いが降りかかる所は「ザマァ!」と思えました。ドイルの父親はジンソンを優しく気にかけたりして味方だと思ったのに口を噤むことを選んだというね…
隣家の少女ミンジは吸血鬼と言ったり何かあるのかと思わせましたが、2歳上でお姉ちゃんとして振る舞いながらも彼女だけ唯一まともというか善人でしたね。最後までジンソンの味方でいてくれたのは彼女だけだったな。
ジンソンが失踪してから円満だと思っていた家庭や夫婦の関係がドンドン崩れていく展開は怖さはないけど嫌~な感じが常に漂っていました。アカシアの木に真っ赤な葉がなって血のような液体で木が真っ赤に染まる所や全身に集るアリのシーンは不気味でキモくて良かったです。
終盤の展開は緊張感も感じられました。最後に明らかになる真相は予想付いてたけど、自分に都合悪い記憶はあんな簡単に忘れられるんだな。祖父の言葉や夢で見たジンソンの腕などは「成程!」と思いましたね。改めてジンソン可哀想。
アカシアの木の根に絡まれて眠るようなジンソンの姿は切なさもあって印象的。アカシアの木が「母」としてジンソンを抱きしめていたのか、それとも自らがもう一度花や葉をつける為の養分としたのか…
ホラーとして見たら物足りない所多すぎると思いますが、悲しすぎるストーリーのサスペンスとしては見応えあったんじゃないでしょうか。