松岡茉優

ブロードウェイのバークレー夫妻の松岡茉優のレビュー・感想・評価

4.8
VHSで鑑賞

最高か!!!久々に観たMGMミュージカルが神がかってた。アステア×ロジャースが10年ぶりにスクリーンに帰ってきた作品でもあり、二人が共演した最後の作品。唯一2人の姿をカラーで拝める作品でもある。
本作で2人は愛し合っているが常に口論をしている夫婦を演じている。アステアとジンジャーのファンからすると全然仲良くならないので少し辛いものもあった。ジンジャー演じるダイナはミュージカル女優としてではなく、硬派の芝居に出演して演技派女優になろうと夫に相談するが当然のごとく反対される。この役柄は実際のジンジャーに当てはまる所が少しあってかなり面白かった。ジンジャー・ロジャースといえばWBやRKOのミュージカル映画で有名だが、実はアカデミー賞の主演女優賞を受賞するほど「演技派」の女優なのである。本人もミュージカル映画ばかりに出演していたときに「ミュージカル映画ばかりではなく、もっと“演技”をしたい」という趣旨のことを言っていた。そんなジンジャーの姿と今作のダイナとはぴったり重なる部分があるのである。
しかも本作のパフォーマンスはどれも目が離せないものになっている。アステアが靴と踊るダンスはソロで踊るアステアパフォーマンスの中でもかなりお気に入り。アステアとジンジャーがリハで踊るダンスはかつての2人を想起させ、思わず涙を誘われる。オスカーレヴァントのピアノ演奏シーンは本作の隠れた見所となっている。終盤にはアステア×ロジャースの十八番とも言えるべきあの曲が歌われるのだが、そこで泣き叫んだ。こういう演出にはめちゃくちゃ弱いんだよ…。
長くなるのでここで詳しくは書かないが、過去作を少し意識した演出もあるのでアステア×ロジャースの作品を観ていた方が楽しめるが、数も多いのでせめて『踊らん哉』だけでも観てから本作を観ていただきたい。
松岡茉優

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