BS録画にて。
モノクロ、スタンダードサイズの、1943年、つまり昭和18年のアメリカ映画。
昭和18年というと、「ニイタカヤマノボレ」の電文によって日本が真珠湾攻撃を行い、日米戦争が始まっていた時期。
でも、この映画にはそういう影は全然感じられない。
南北戦争後のアメリカの西部を舞台にして、牛泥棒を追う田舎町住民と、彼らに捕縛された4人の男たち、そして正式の裁判にかけるのではなくその場の即決で容疑者を処刑しようとする住民たちの様相を描いています。
アメリカという国は、もともと地方分権的で、中央の(よくも悪くも)統制が及ばない部分が大きいので、こういう「逸脱」も起こり得るわけですが、言うならばアメリカという国の野蛮なマイナス面を描いている作品なんですよね、これは。
でも日本人からすれば、日米戦争が起こっているさなかに、戦争と無関係なこういう映画を作ってしまうアメリカの底力が感じられる、とも言えるでしょうね。所詮は、日米の国力にはこのくらいに差があった、ということです。
と同時に、アメリカという国家が「近代」に達しておらず、「近代以前」であり続けてきたこと――それは黒人差別が21世紀の今でも解消されていないという事実からも分かります――も、この映画はしっかりと表現しているのです。
そういう意味で、貴重な映画。