牛泥棒の作品情報・感想・評価

「牛泥棒」に投稿された感想・評価

このレビューはネタバレを含みます

冤罪

人の持つ[良心]は、本来、正義を行うための羅針盤のような働きをする。
人の思考や行動を正しい方向へと導くのだ。

正義とは、神の義、つまり神の義の基準のこと。

だから[良心]が、神の義の基準によって訓練されていないと、容易に自分の望むことを行うようになってしまう。

正しくないことをしても[良心]が痛まなくなった人は、神の目からみれば忌むべき者に過ぎない。

正しい[良心]を持っていたのは、
七人だけだったね。

正しい情報もなく。
明確な証拠もなく。
すべてを調べ尽くした訳でもなく。
いや調べようともせずに。
吊るされたドナルド・マーティンの絶望と慟哭は神に届いたに違いない。
1885年ネバダ州。冬越しのあと訪れた町酒場に、牛飼いが殺されたという報せが入る。法の元での裁判をするべきだという町長(?)の意見を振り切って、町の男たちは私刑に掛けようと現場へ駆けつける。そこには3人の男が野営をしており、彼らは必死の哀願も虚しく多数決によって決定された首吊刑に処せられてしまう。しかし町へ帰ろうとする住民たちの元に、たまたま行きあった保安官が牛飼いがまだ生きていて真犯人が捕まえたと告げる。

『廃墟の群盗』がそうであったように、全編を通して荒涼たる暴力の雰囲気に満ちている。興奮すらなく、正義の元に行われる死は覆らない。フラナリー・オコナーみたいな寒々しさが現出していた。
まあ台詞はかったるかったけど。

フォードが光の人ならウェルマンは陰影の人という感じで、まあ『廃墟の群盗』にはちょっと負けるかなとは思うけど、みんな一斉にタバコをつけるところとかかっこよかったね。顔はちょっとやりすぎかなとは思うし、ヘンリー・フォンダの目が妙にキラキラしていて狂気の表現かと思ったら西部劇らしい美徳の体現者だった。
シズヲ

シズヲの感想・評価

4.1
イーストウッドに多大な影響を与えた西部劇。フロンティア(ひいてはアメリカそのもの)の自警主義への疑念、そして感情的正義に煽られた大衆の無自覚な残虐性が静かに叩き付けられる。75分という尺の短い作品ながら登場人物の役割描写が端的。友人の死に憤る感情的なカウボーイ、権威を振りかざす自称南軍少佐、保安官不在でしゃしゃり出てきた副保安官、裁判による解決を望む理性的な老人、面白がって煽る酔っぱらい……等、烏合の衆同然である町民達の生々しい人間模様が印象深い。ただの群衆が感情論や扇動者など様々な推進力を与えられたことで私刑行為へと至る流れは淡々としながらも惨たらしい。その上で彼らは悪人ではないからこそ罪の意識に項垂れてしまうのだ。

終始に渡って地味な内容ではあるものの、所々で見せる不穏な演出は素晴らしい。陰影と共に映し出される歪んだ樹木は(黒人牧師がすでに兄の私刑話を持ち出していたのも相俟って)まさしく首吊りを連想させるし、全てが終わった後の酒場で町民達の茫然自失とした表情を黙々と映し出すカメラワークも印象的。終盤に明かされる「法という良心の意義」を綴った手紙の内容はまさに私刑行為への逆説的な批判そのもの。この映画の時代背景がフロンティア末期ということを考えると「形骸化した正義」という有り様が更に顕著に浮かび上がる。手紙を読み上げるヘンリー・フォンダの目元が隠れるカットや冒頭とラストを同じ構図で終わらせた演出も良い。

こういう内容の西部劇が戦時中の時点で誕生していること自体が面白いし、この疑念性は実際イーストウッドの作風に通じるものがあるから興味深い。ただ他のレビュアーも触れてるけど、新婚夫婦が現れる下りはフォンダ演じる主役の掘り下げにしても主軸と無関係であまり必要性を感じないんだよな。
U

Uの感想・評価

-
2019.2.15 DVD #37

法的な手続きを介することなく行われる私刑(リンチ)のグロテスクな側面を明るみに出す後味が悪い作品。
おちゃ

おちゃの感想・評価

4.0
1

むき出しの暴力と問題提起、正義系の話って時代背景強く出ると思うんだけどどうなんだろう
イーストウッドを思い出しました
牛泥棒の犯人を巡るウエスタン映画。
一体正義とは何なのか?を描いた
ヒューマン要素が大変強い作品。

ヘンリー・フォンダ演じる主人公は、
とある町に辿り着く。

いきなり酒場と喧嘩したりと、
気性の荒い性格の持ち主だが、
ここで町の人間が
殺された、牛が盗まれたと一報が入る。

ここで町の皆は一致団結して、
犯人を捕まえようと意気揚々になる。

一緒に着いていく
ヘンリー・フォンダだが、
待っていたのは残酷な人間模様。

絶対的な確証がある訳でもない、
裁判官等の第三者による判断どはない、
にも関わらず、少し疑い深いだけで、
二人の男性を吊るし上げる一行…

冤罪、正義をえげつない描写で描いた、ある種の社会派作品でもあった。

ヘンリー・フォンダと冤罪と言えば、
とある黒人の容疑を陪審員として争う
「十二人の怒れる男」を思い出す。
イシ

イシの感想・評価

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「スター誕生」の(略)

シネフィル男子の映画史で褒められてる映画
冤罪で私刑に処された男は、どうやら素晴らしい手紙を遺したらしい。ズームすると、手前の男の帽子のつばで、手紙を読みあげる男の目が隠れる。このショットだけでもう充分だった。

ファーストカットで馬が町に入ってくると建物の奥からいぬが手前に歩いてきてフレームアウトする。ラストカットでは町を出ていく馬と手前からフレームイン後建物の奥に消えていくいぬ。数学的とさえいえる几帳面な演出。
Zorba

Zorbaの感想・評価

3.8
まんま00年代以降のイーストウッドで驚き。にしても女性の役回りがもうひとつわからず。元カノやママはあれで機能してるの? 女性性や母性が前に出てくることで主題がぶれるのを恐れたのだろうか。
いままで見てきた西部劇もとい、映画の中で一番おぞましいかもしれない。固定ショットとパンだけの連鎖の中時折挟まれる、超引きのショットや告解を告げるシーンのトラックバックや酒場の罪人を映した横移動が本当に怖い。
不気味にそびえる枯れ木と縄が彼らの凶兆を告げる。陰影の、白黒はっきりした照明
冒頭の方のツバ吐きや冒頭とラストに犬が出てくるのはイーストッドにも受け継がれる。グラン・トリノ、アウトローのツバ吐き、パリ行きの白い犬、これまたアウトローの犬。
似たようなリンチを題材にした映画で激怒があるが、あっちよりも救いがない。復讐すら受ける資格もないのだ