しろくま兄サキス

オープン・ユア・アイズのしろくま兄サキスのレビュー・感想・評価

オープン・ユア・アイズ(1997年製作の映画)
4.0
【鼻持ちならない男の、被害妄想映画】

金持ちでハンサムで親友の彼女も平気で寝取ろうとする、自己中心的なまったくいけ好かないダメダメ野郎。こんなヤツの夢のハナシなんて実はどうだって良いのだ。でもナニか引っかかる。自分は自分。他がどうであろうと自分が自分であると認識している以上、それは変わらない。本当にそうか?外見が著しく変わったらそれは自分といえるのか。そしてそんな自分と関わりを持つ他者の反応も変わっていったら?他者が全くいない世界で自分のアイデンティティは保てるのか?果たしてオレは本当にオレなのか?

 よく考えたらこれは本当に怖い。儂ゃ金持ちでも親友の彼女寝取ることもしないけど、ハンサムで(←ウソ)エゴイストのいけ好かないダメダメ野郎なのは同様。「顔」というワケではないけれど、よって立つ大切なもの「家族」も持ってしまっている。それ以外にレゾンデートルを持たなかったとしたら、失ったときにはもはや夢に逃げ込むしかないのではないかと思える。

 追いつめられた不安感、喪失感、悪夢感をセンスのいい映像でまとめ上げたスペイン人監督に拍手。次回作もこの路線で行って欲しい。(行ったらしい)。