れれれざうるす

性の曼荼羅のれれれざうるすのレビュー・感想・評価

性の曼荼羅(2001年製作の映画)
3.4
5歳の頃から僧侶の坊主タシは、ある時気付く「そもそも“悟る”ためには俗世を知り、禁欲生活を送らないと駄目」なのではと。わかりやすく言うと「ヤリてぇ!!」…というわけで(語弊)僧院を離れて俗世を経験するという物語。全編チベット語、製作はヨーロッパだが全員チベット人(中国人)の隠れた秀作。

タイトルとジャケ的にアダルトかつ「難解なショートバス」と思った私のような人間は観終えたときには、きっと悟りを開いてるでしょう。
まず約1時間ほど淡々と台詞もなく、僧院生活が写される。他の映画では、いや下手したら人生で見ることのないほどの美しい風景に息を飲む。こんな場所が世界にあったのかと。ずっーと美しい。圧巻です。

飽きはしないものの、そのあまりの淡々と進む様に展開が感じられないので退屈な部分もしばしば。あと…タシの顔が…生理的に受け付けない…(小声)セックスシーンはそんなにないし下半身が丸出しになるわけじゃないけど、空と木々と大地と女性が、一度に一体化した様な綺麗なショットで断じてエロティックなものを感じさせない見事なカメラワーク。(ジャケひどいわコレ。原題は「samsara」で無常、流転、輪廻などの意味)

印象深いのがタシが無精しているのを見て坊主Bがそっと涙を流すシーン。仏教の何たるかなんてわからないけど、長く僧侶生活を送るタシに“邪心”が生じたことに涙したのだろうか。
途中、夫婦での生活に焦点を当て「これどう持っていくの?」と少々億劫になったものの、普通に生活する観客にもタシにも、私の小物な脳では考えぬような「真理」を問いかけるような悲しいラストが待っている。
人間とは?仏教とは?煩悩とは?

万人受けはしなさそうだけど、タイトルとパッケージに騙されず是非手に取ってもらいたい。