れれれざうるす

RAW〜少女のめざめ〜のれれれざうるすのネタバレレビュー・内容・結末

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

倒錯や偏愛、思春期や青春、ホラーやスプラッターを特に好きなジャンルとして観てる私からしたら全て詰まった最高な映画。

『菜食主義者が人肉に目覚める』と一言では語れない内容だった。わりと真面目に人肉食べるのを夢見てる私から見た滅茶苦茶な感想なのでご注意。

まず彼女は“処女”ってとこが重要。
一般的であろう周りの大学生達を過剰に性に対して意識が低く描写されている。それはもう異常なまでに。
おそらく故意に周りの人々を不快に描いている。
彼女は処女だから馴染めないのか?性の悦びを知ったらみんなと同じようになるのか?

しかし彼女はセックスをしても人間の様に性には目覚めなかった。周りは“性の悦び”のことばかりだが、性交と肉を同時期に初体験した彼女は“食の悦び”にだけ目覚めてしまった。本当にたったそれだけ。
じゃあ全裸で踊ることは普通なのか?
全身ペンキ塗れで乱交するのは普通?
他人のセックスを見て自慰するのも?
どう考えてもそっちの方が異常である。ただ大多数の人間は歪んだ性行為や行動を行なってるから一見マトモに見えているだけ。
小さな個室で男女2人きりにされたとき、“普通”男は我慢出来ずに手を出すはず。つまり彼女は同じ様な感覚で我慢出来ずに唇を齧った。食欲か性欲かの違いのみ。
おっぱいを舐めるのは普通?フェラをするのは普通?
それは生き物として普通の行為なのだろうか。人間以外の生き物は陰部を舐め合うのだろうか。
一方人を食べたい欲求は異常になるわけで…。
果たして自然界の動物として至極真っ当な行動を取ってるのはどっちなのか。
(単純に人殺しとかそういうのは置いといて)

アドリアンとセックスした際に彼女は最後に自分の腕を噛んでいた。例えば猿は興奮したとき、自制する為に手を噛むと言われている。おそらく目の前の獲物を至近距離で味わうことでの興奮はあったが、セックスによるフィニッシュが出来ず自らを噛むことで衝動を抑えたのだと思う。
姉妹でのドッグファイトやお気に入りの人間を見る捕食者の目つき、体毛を気にしなかったり動物側の気持ちで物事を考えられる部分を見るに彼女は完全に動物寄りの人間。

人の肉の味を知った犬を安楽死させていたが、もし犬が猫を食べても殺さないだろう。人間が犬を食べても犯罪者にならないだろう。
何故なら人間は食物連鎖の頂点であり、自分達人類は絶対的存在だから。人間より上の生き物はいないと思っている。全ての動物を下卑している。
なので人間様を食べる行為は最もタブーとされている。

世界的に菜食主義者の人はアレルギーや健康志向や宗教を除くと動物愛護的な観点から食を見ているらしく、生き物を殺して食べるなんて…という考え方の人が意思表明するかの様に肉を食べない。
でも彼女は獣医を目指す学生。やたらと動物を裂いたり吊るしたりするシーンがあったが、『肉を食べることは出来ないくせに殺して利用するのはいいのか?』という皮肉を感じた。
私から観るとこの映画は痛烈な人間批判に見えた。

ただ本作はその様な問いかけを特にしておらず「実は両親も人肉嗜食でしたー!」なブラックユーモア溢れる血は争えないというオチなので、物語として非常にわかりやすくなってる。逆にメッセージ性が霞んでしまうオチでもあるのが残念だが。(みんなが言っている性のメタファーもこれによって台無しにされている気がする)
ホラーやスプラッター描写に関しては個人的には少し物足りない。人肉を食べるシーンや人間に噛み付くシーンがあまりに動物的すぎてドキドキしたがゴア描写としてはイマイチ。我を忘れて肉を食べる絵面で観客を陶酔させてほしい。それこそ失神するほどに。(多分これ失神者出たってのは嫌悪したんじゃなく人肉食願望が芽生えた人達じゃないかな?違う?)

カニバリズムを性のメタファーとして捉えてる人が多いし多分監督もそういう意図なんだけど私としてはやっぱりそこはあくまでも現実に起こり得る性的倒錯として捉えていたい。カニバリズムを否定してほしくない(?)。
実際世界中に人肉愛好家はたくさん潜んでるし、人肉愛好同士のカップルや夫婦も現実にいるので。
これをよくある映画と言ってる人たちはあまりこの手のジャンルを観ないのだろうな。そもそもカニバリズムと言っても何を目的として人を食べるのかが全く違うので「グリーンインフェルノ」や「ハンニバル」の名前を挙げるのは話が違う。

総合的には音楽含めすごく好きだった。めちゃくちゃ好きでいつも聞いてるフランスのアーティストの曲がパリピシーンでフルで流れたのが嬉しい。
たまたま一つ下の仲良い妹と観に行ったから思いがけぬ姉妹映画だったのもたまらない。実は同じ偏った嗜好だったていうのを本当に経験したことがあるから凄く共感出来た。