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ダイエット・ラブのnetfilmsのレビュー・感想・評価

ダイエット・ラブ(2001年製作の映画)
3.8
 ミニ(サミー・チェン)は10年前、黒川(RIKIYA)と恋に落ちた。彼女はアメリカへ留学するために旅立ったが、黒川に「10年後、再会したら結婚しよう」とプロポーズされていた。それから10年、黒川は順調に天才ピアニストへと成長を果たすが、ミニはホルモン・バランスの影響から、10年前とは比べものにならない「デブ」になっていた。冒頭、10年の冷却期間を終え、純粋に観客の一人として黒川のコンサートを聴きに来ているミニの姿が映し出されるが、彼女は自分が100kg以上太った劣等感に苛まれ、我慢出来ずに会場を後にするが、あまりの巨漢に階段から転げ落ちる。そこに偶然通りがかった黒川が彼女を助け起こすが、あまりの容姿の変化からか、黒川は彼女に気付かない。かつて結婚を誓い合った間柄でも、10年の歳月の変化は残酷であまりにも重い。ミニは自分の綺麗だった容姿にコンプレックスを抱き、ホルモン・バランスの変調からやけ食いが欠かせない。そんな彼女のことを10年前の姿で思い浮かべると思うと、黒川にありのままの姿がさらけ出せない。そんな彼女の前にフェイロウ(アンディ・ラウ)が突如現れる。行くところのない彼女はフェイロウについていき、黒川への恋心を打ち明けると、フェイロウはミニをどうにか昔のような体に痩せさせ、黒川に合わせるという。そこからフェイロウとミニのダイエット生活が幕を開ける。

 アンディ・ラウとサミー・チェンの2本目の共演映画。そのきっかけとなった『Needing You』の特大ヒットは監督であるジョニー・トーにも、出演者であったアンディ・ラウとサミー・チェンにも更なる成功をもたらした。ヒロインだったサミー・チェンは国民的歌手のイメージから一躍、香港映画で興行収入の見込めるトップ女優への転身を果たす。サミー・チェンの一番の魅力は何と言っても彼女が「普通」の女性であることに尽きる。これまでのジョニー・トー映画の中でもアニタ・ムイやシルビア・チャン、マギー・チャンらは圧倒的にスターのオーラで観客を魅了したが、サミー・チェンは親しみやすさで共感されるごく普通の女優としてスクリーンに存在する。屋上で、ミニとフェイロウが黒川と再会した時のシュミレーションをするあたりは、女性でなくてもキュンと来る。ミニはフェイロウに唇を委ね、重ね合わせた時間は永遠にも感じられる。このシュミレーションをする男女の場面は『Needing You』でも観られた名場面である。ジョニー・トーの映画では、しばしば男は女の恋愛成就のために協力するが、いつしか彼女の心の清らかさに好意を寄せていってしまう。毎度毎度トレンディ・ドラマのような安直な筋立てにも関わらず、この魅力にはなかなか抗えない。
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