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ニックス・ムービー/水上の稲妻のあのレビュー・感想・評価

4.4
本当にいつ死んでもおかしくない人間がカメラに向かって演技している様は初めて見たので衝撃的でした。途中ニックさん「あ”ーーーー!!」って声あげながら喋ってましたけど、あれ絶対苦しさを大声で紛らわせてたんですよね?そんな状況なのに、ニックさんもヴィムさんも「まあそんなことは置いといて...」みたいに何事もなかったかのように撮影を淡々と進めていくのがなんかシュールでした笑。
今まで演じる人を撮り続け、巨匠と謳われてきた監督自身が、最期は自分がカメラの前に立ち、もう巨匠の威厳を放つことのできない容貌なのに、最後まで巨匠を演じようとしていたところに、どこか巨匠を演じてきた今までの自分を曝け出す、ニコラス・レイ監督自身の覚悟が感じられました。そして、そんなニコラス・レイ監督にカメラ越しに見つめられたヴェンダース監督も、撮っているのか取られているのか分からなくなっていくところに、映画監督という職業の皮肉や業のようなものが見て取れました。そして作中でニコラス・レイ監督自身が言及していた次回作のアイデア「ジャンク船」が最後通夜のように語り合う撮影陣たちと川を下っていくところで締めくくられているところを見るに、ニコラス・レイという監督は、最後自分自身を映画で葬送したんでしょうね。なかなかおしゃれな映画監督としての最期だと思いました。
最期まで監督であろうとするニコラス・レイの執念と、そんな先輩へヴェンダースが同業者として送るこれ以上ないリスペクトが多分に感じられる作品でした。
あ