くりふ

大酔侠のくりふのレビュー・感想・評価

大酔侠(1966年製作の映画)
3.5
【踊るように斬る】

JAIHOにて。元々チャンバラに興味なく、武侠アクションも殆ど見ていないので、こうした古き重要作に親しめるのは配信ならでは。ありがたや。

中国、明の時代、総督命令で盗賊の元へと、人質の奪還に向かう女剣士に、“舐めてた酔っ払い”が絡むが実は…な活劇絵巻。レトロだが、やさしくて、まあ痛快!

面白さの内訳とは、普遍的:時代を超える:賞味期限切れ…が配合されたもので、効能には個人差がある、などと思っていますが、本作は4:3:3くらいかな。時代越えについては、今だからこそ、牧歌的ゆえ新鮮なところ多々。年代ものの風味がちゃんと広がります。

盗賊との駆け引きにも引きがあるが、やはり物語をキン!と転がすのは剣のアクション。

小柄で愛らしさを残す、健気な女剣士・金燕子を演じるチェン・ペイペイに武道の心得はなく、バレエダンサーだったそうですね。だからか、その動きは殺陣というより、流麗デンジャラスな舞踏としてお見事!美女に刃物。監督は京劇を意識して撮ったそうですが。

チャンバラは、死がいつ炸裂するかとジリジリ対峙する“溜め”がいかに大切か、改めて教えられる。本作は溜め、多すぎる気もするがその分、ペイペイ美に浸れる効能があるという。

映画初のアクションヒロインとも言われるそうですが、物語的には、やっぱり男に助けられるってのが時代ですねえ。自由を奪われ仄かなエロスが漏れ出して…な面は、良かったが。

で、物語を乗っ取る“舐めてた酔っ払い”はまあ、厚みのある人物。ヒロインもそうですが、お悩みの解決と勝利することが、この時代らしく素直に同期しており、共感しやすい。

妖術バトルにまでイッた時は笑ったが。そして、男同士の物語として締めたいのはわかるけれど、女剣士の物語と乗算にならず、カニバッちゃった処は残念でしたね。

その悪影響が表に出たものか、女剣士本来の任務は半端に終わってるよね?敵の首領がどうなったか、よくわからないのだが…。逃げたのなら彼女、父ちゃんに激オコされるじゃん!

一方、ミュージカルシーンも意味を込めた楽しき見せ場で感心。全体、これだ!という強烈なシーンは今の視点からは見つからないが、ちゃんとした娯楽の幕の内弁当ですね。

日本にも昔は、こうした美味しさ、たくさんあったと思うけどなあ…。

<2023.2.3記>
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