桃子

狼男の桃子のレビュー・感想・評価

狼男(1941年製作の映画)
3.8
「4大モンスター制覇俳優」

ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、ミイラ、と次々にユニバーサル古典ホラーのモンスターたちを見てきた。おや?まだひとり、見ていない怪物さんがいたな… というわけで、ウェアウルフである。
恥ずかしながら、ロン・チェイニー・ジュニアを初めて拝見した。モンスター役の俳優さんというのは、長身の人が多いのだろうか。背が高いだけでなく、恰幅もいい。お父さん役がクロード・レインズである。どう考えても親子には見えない。でこぼこ親子である。
意外な俳優さんがふたり出演していた。ジプシーの親子が出てくるのだが、その母親がマリア・オーペンスカヤ。「邂逅」でシャルル・ボワイエの祖母役をしていた。息子がベラ・ルゴシである。ドラキュラやマッドサイエンティスト以外の役を演じている彼を初めて見た!出番は短いのだがインパクト大である。とはいえ、端役の印象は否めない。モンスター役の世代交代ということだったのかもしれない。
ストーリーは呆れるくらい単純で、狼男をデビューさせるためだけに作られた映画なのかと思ってしまう。原作小説はなく、SF作家のカート・シオドマクが脚本を書いている。ストーリーがシンプルなだけに、いかに狼男のビジュアルが重要だったか、想像に難くない。銀に弱いというのは見ていてすぐわかったのだが、満月の晩に狼に変身するというテッパンの設定は弱かったように思う。満月のアップが出てくるのを期待したけれど、全くなかったので、これはちょっと残念だった。
DVDをレンタルして見たのたが、本編よりも解説やメイキングの映像の方が興味津々だった。特殊メイクを担当しているのはジャック・P・ピアースである。手作業なのでメイクをする方もされる方も大変だったようだ。メイクを施すのには6時間、外すのには3時間かかったという。チェイニー・ジュニアは辛抱強くメイクされていたが、時にはイラついてピアースを殴りかかる動作をしたらしい。その写真が残っている。モンスター役の俳優さんの苦労って、並大抵のことではなかったんだなあ。ほんとにお疲れ様でしたと言いたい。
狼男のメイクは伸縮性がなかったので、表情を変えることはできなかったようだ。狼に変身した毛むくじゃらの大男が両手をひろげながらグワ~~~~~っと登場する。当時はこれだけでも充分怖かったのだろう。
チェイニー・ジュニアは、全部で5本の狼男映画に出演している。できれば全部見てみたい!彼はこの映画でホラー映画スターの仲間入りをし、さらに「フランケンシュタインの幽霊」ではフランケンシュタインの怪物、「ミイラの墓場」ではミイラ男のカリス、「夜の悪魔」ではドラキュラを演じているので、ユニバーサルの4大モンスターを全て演じた唯一の俳優だという。これは凄い!
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