中世における“悪魔”という存在、そしてその認識が引き起こした“魔女狩り”という悲劇を記録した作品。
構成が面白く、第1部は絵画を中心とした悪魔の描かれ方、第2〜6部は魔女狩りを題材とした劇映画、そして第7部は現代(1920年代)における悪魔の存在に迫る。
第1部はかなりドキュメンタリーとしてかなり独特で、実際の絵画を見せながら解説していく、講義に近いような映像。宗教的に馴染みがないとあまり頭に入ってこない内容ではあるが、仕掛け絵みたいに動く地獄の光景であったり、映像として面白い部分はあった。
第2〜6部の劇映画は一般的な無声映画に近いものだが、単純に内容が面白い。魔女だと疑われ囚われた老婆が、拷問の果てに魔女との関わりを告白し、周囲の女性たちも次々と捕えられていく狂気の連鎖が描かれる。映像表現としても、空を飛ぶ魔女たちの合成映像は100年以上前の映画と思えないクオリティ。
また、第6部には一部拷問器具の紹介パートがあるのだが、ここはギャスパー・ノエ「ルクス・エテルナ」の冒頭部分に引用されている。
第7部では、ヒステリーを代表とする精神病が当時の魔女的であることや、現代はもはや悪魔の絵を恐れないが、その代わりに有名人の姿になって現れるなど、形を変えて迷信として残り続けるだろうという、現代における悪魔の考察が語られる。
現代ではより精神病や宗教学の理解は進んでいるのだろうが、単に映像作品として観ても面白く、そして何より貴重な1本であった。