一人旅

71フラグメンツの一人旅のネタバレレビュー・内容・結末

71フラグメンツ(1994年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ミヒャエル・ハネケ監督作。

一人の大学生が銀行を襲撃。人々を射殺した後、車内で自殺するまでの過程を描く。

フラグメント・・・断片。
タイトル通り、いくつもの断片映像が画面に映し出される。
そのため、映像の前後関係は不明なことがほとんどであり、登場人物同士の関係性や性格・心情も、一部が明らかになるだけで不明な点が多い。
そして、大学生がなぜ突然人々を殺害したのか、その経緯も劇中明示されない。

DVDにはハネケ監督のインタビューが収録されている。
その中で、『全てが親切に明らかにされるその他多くの映画とは違って、この映画は真相が分からないまま終わる。』という言葉があった。

つまり、本作はより現実に近いのではないだろうか。
劇中、テレビに映る紛争やテロのニュースもまた断片的であり、そこに映る映像以外の情報は一切視聴者に与えられない。しかし人はそのような限定的で恣意的な情報のみに頼らざるを得ない。全体からするとごく一部の与えられた情報を元に、人は自身の考えを形成し、それが集合すると世論になる。
この映画でも、観ている側には断片的な映像だけが情報として与えられる。自分なりに事の真相を理解しようとすることも可能ではあるが、その結論は観る人によって千差万別だ。
誰もが全てを同じ様に理解できる映画は現実とは乖離している(そもそも映画は現実とは違うけど)。
その点、本作は“分からない”点が現実的だ。
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