ユースケ

エルム街の悪夢/ザ・リアルナイトメアのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

ご鑑賞の前に大切なお知らせ
本作は【エルム街の悪夢】公開10周年記念作品という【エルム街の悪夢】シリーズを途中で投げ出さずに付き合い続けたファンへのご褒美的な作品です。これまでの【エルム街の悪夢】シリーズを全て鑑賞してファンと同じ苦しみを味わってから鑑賞しましょう。


赤と緑のボーダーニットに茶色の中折れ帽、右手には自家製の鉤爪をキメたお茶目な殺人鬼フレディ・クルーガー(ロバート・イングランド)が血気盛んな少年少女を悪夢の世界に引きずり込んで切り刻む【眠ってはいけない】シリーズ第7弾(番外編)は、回を追うごとにクオリティが落ち続け、フレディの悪ふざけを楽しむコメディ映画に成り下がってしまった【エルム街の悪夢】シリーズを復活させるべく、【エルム街の悪夢】の生みの親であるウェス・クレイヴンが監督・脚本・製作総指揮を務め、【エルム街の悪夢】シリーズが存在する現実の世界に虚構の存在であるはずのフレディが現れて1作目と3作目でヒロインのナンシーを演じたベザー・ランゲンカンプに襲い掛かるというメタフィクションな一本であり、「恐怖について語り、恐怖について知り、恐怖を相対化し、恐怖に打ち克つ」というホラー映画の存在意義を【エルム街の悪夢】というフォーマットを使って描いた趣深い一本。

メインキャストのヘザー・ランゲンカンプやロバート・イングランドはもちろん、監督・脚本・製作総指揮のウェス・クレイヴン、プロデューサーのマリアンヌ・マッダレーナ、【エルム街の悪夢】シリーズのプロデューサーでニュー・ライン・シネマの元会長のサラ・リッシャー、ニュー・ライン・シネマの創業者で元CEOのロバート・シェイなど、スタッフも本人が演じる気合の入ったキャスティングは要チェック。
1作目と3作目でナンシーの父親を演じたジョン・サクソンや4作目でパトリシア・アークエットの代わりにヒロインのクリスティンを演じたテューズデイ・ナイトの再登場させるファンサービスもたまりません。

とにかく、鉤爪をDIYするオープニングをはじめ、受話器から舌が出てペロペロしたり、血塗れで部屋の壁や天井を引きずり回したり、階段をネバネバにしたり、1作目へのオマージュが盛り沢山。
フレディの存在を信じてもらえないばかりかジャンキー扱いされ、心労によってナンシーと同じく前髪の一部が白髪に変わったヘザー・ランゲンカンプが、ジョン・サクソンにナンシーと呼ばれた事をきっかけにフレディと対決する覚悟を決めるシーンは必見。服装がパジャマに変わり、例の青い扉の家が登場する演出にはシビれました。

全ての出来事がウェス・クレイヴンが執筆中の【エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア】の脚本通りになっていく展開や【ヘンゼルとグレーテル】の読み聞かせの伏線が効いたヘザー・ランゲンカンプが【エルム街の悪夢 ザ・リアルナイトメア】の脚本を息子に読み聞かせるラストシーンも秀逸。

【キャビン】の約20年前にホラー映画をテーマにした作品を作り上げ、「悪夢を現実にしたくないなら黙っていろ!」と映画の検閲に対する警告まで発していたとは…おそるべしっっ!!!ウェス・クレイヴン。