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長く熱い週末の一人旅のレビュー・感想・評価

長く熱い週末(1980年製作の映画)
3.0
TSUTAYA発掘良品よりレンタル。
ジョン・マッケンジー監督作。

ロンドンを舞台に、何者かによる陰謀に立ち向かうギャングの姿を描いたサスペンス。

イギリス産ネオ・ノワール(1940~50年代のフィルム・ノワールをカラー映像で後年復活させた作品群)の代表的作品で、主人公のギャングのボスを個性派ボブ・ホスキンスが熱演しています。個人的にボブ・ホスキンスは存在感の強烈な脇役がお似合いの俳優だと思っていたので、あえて主演に持ってきた今回のキャスティングは大胆です。決して大柄な俳優ではありませんし、ジョー・ペシやダニー・デヴィートと同じ匂いのする個性派ですが、もはや顔芸の域に達した演技は強烈です。共演にはこれまた意外性のあるヘレン・ミレンがボブ・ホスキンスの妻役として好演しています。ちなみに、後の5代目ジェームズ・ボンドとしてブレイクするピアース・ブロスナンも端役として顔を出していますが、言われなければ気づかないほど初々しい顔立ちをしています。

舞台はロンドン。ギャングのボス、ハロルドは自身の都市開発を実現するためニューヨークのギャングを呼び資金提供契約を交わすための交渉を始める。その矢先、ハロルドの手下が何者かによって次々と殺害される事態に直面。怒りに震えるハロルドは組織を総動員して事件の背後に潜む黒幕を暴き出すため奔走するが…という“ミステリータッチの犯罪サスペンス”を、裏切りとIRAが絡んだ予想外の新展開を絡めてサスペンスフルに描き出しています。

お話的には可もなく不可もない作品ですが、容疑者として屠畜場に連行されたギャングが牛の死体のように吊り下げられた状態で尋問を受ける場面や、割れたビンで首元をめった刺しにして血飛沫が噴出する場面、さらにはプールで出会った見知らぬ二人の男がホモセクシュアルな愛撫を見せた後無残に刺殺される場面など、ショッキングな映像・演出が淡々とした作劇の中に独特のリズムを与えています。そして、ボブ・ホスキンスの全裸シャワーシーンを長回しの映像で見せる“誰得”な場面や、これまたボブ・ホスキンスが1カットの中で表情を巧みに変えていく“意味深”な長回しのラストカットまで、主演を務めたボブ・ホスキンスの魅力と存在感が始まりから終わりまで出ずっぱりの欲張りな作品にまとめられています。
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