TAK44マグナム

リアル・ハントのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

リアル・ハント(2008年製作の映画)
3.7
ぎゃあああああああああああああああああああ!!

日常に疲れきったママが、「悪い子は死んでおしまい!」と我が子たちに襲いかかる不条理ホラー!

こ、これは怖い!
結婚していると少なからず身に覚えがないわけでも無いので、本当に怖いです!

四人の子供(ひとりはまだ赤ちゃん)がいる家族。
職業トラックドライバーのパパさんは家を留守ぎみで、ママさんは一人で子供たちの面倒をみたり家事をしたりでエブリディ頑張りすぎなのでした。
たまにパパさんが家にいても、ちゃんとした会話もままならない状況に、ママさんの苛立ちは最高潮に達しちゃいます。
「今夜は子守り頼んで出かけたいわ」
とSOS発信しても、「色々あるから無理だろう」とスルーされちゃうわ、子育てにも疲れているのに、「もっと子供つくれば楽になるさ。帰ったら励もうぜ!」と追い討ちをかけてくるパパさんの空気の読めなさにブチ切れる寸前!
まあ、自分が男だから分かるけど、奥さんの細かい心の機微には中々気付けないんですよね・・・(汗)

冒頭からしてこれなので、映画が始まったらすでにママさんがキチガイ化しているところからスタートという素晴らしいテンポの良さ。
なにせ尺が77分というコンパクトさなので初っぱなから余計な説明なしに飛ばしますよ。

パパさんがまた仕事に出ると、家にはどこか様子のおかしいママさんと騒々しい子供たちのみ。
長男くんは空気を察してママさんの手伝いもやったりしていますが、まだまだお子ちゃまな妹ちゃんや弟くんが喧嘩し始めたりして、ついにママさんが本格的にキレまくります!
お仕置きどころか殺す気まんまんで迫り来るママさん!
ピッチフォークやナタを振り回し、巨大なトラクターで我が子を追いたてますよ!
ひょええええ!マジで怖い!

ナイフに映りこむママさんなど、印象的でキレのあるショットが多く、カメラワークも怖さを倍増させるアングルで撮っていたりして、ホラー映画として安定した完成度でありますが、見てはいけない倫理感の崩壊って感じでまったく笑えないし、特に家族団らんの時に鑑賞するには一番不適切な部類の映画だと断言できます!

ママさん版「シャイニング」、子供が反撃にでるクライマックスは何となく「キッズリベンジ」を思い出しました。
それにしても妹たちを守ろうとする健気なお兄ちゃん・・・切ない!
気が狂ったママに殺されそうになってからの、あのラストはマジで無いでしょう。
パパさんのあまりの無神経ぶりに唖然とすること間違いなしです!
決して家族思いじゃないわけではないけれど、パパさん、あんたはアホか!
有り得なさが咲き誇るオチで、ママさんが何故にあそこまでマジ鬱になってしまったのかが判明しますが、後味の悪さが異常DEATH!

ほぼ救いのないお話ですけど、昨今のホラー映画としてはグロさ控えめです。内容がやりすぎなので、せめて描写だけはやりすぎを避けたのかもしれませんね。

ママを演じた女優さんはよく知らない美人さんでしたが、びっくりするぐらいの大熱演で、最初っから最後まで目がイッちゃっていて、まさにハンティングに勤しむケモノの如くでしたね。
ただ、ハンティングといっても「リアルハント」っていう邦題は内容からするとヘンテコなタイトルだなとは思いますが。

どこをどう切り取っても酷い映画ですけれど、ホラーは酷ければ酷いほど評価できるのも事実。そういった意味では優れていると言えると思いました。
現実の虐待事件はもっと残酷だろうし、世のママさんたちの疲弊に対して警鐘を鳴らす問題提起作として受け取っても良いのではないでしょうか。
奥さん(ママ)をもっと労りましょうね!

それにしても、妹ちゃんの描いた「家族の絵」が、うちの娘もよく同じような絵を描くだけに胸を締めつけました。


レンタルDVD(ツタヤディスカス)にて