【愛と成金の果て】
アイロニーもほんのり効かせた、ダグラス・サーク監督渡米後・初期のさらさらコメディ。私はたぶん、サーク作品をきちんとみたのはこれが初めて。
サーク監督が目をつけたロック・ハドソンの主役級起用や、パイパー・ローリーがこんなに可愛らしかったことや(後にキャリー母やツイン・ピークス悪女に化けるなんて!)、ブレイク前のジェームズ・ディーンがデ・ニーロじみた?存在感出してることなどお宝度も高いですが、とにかくも、チャールズ・コバーンのキュートな魅力が炸裂してます!(笑)
瞳イキイキお茶目じじい。自己中気味の成金役がイヤミに転ばないのは彼の功績でしょう。役の立ち位置もいいですね。ヘルプはするがヒーローではない男。ラストの後ろ姿など意外とハードボイルド。
しかしサーク監督自身は本作、あまり評価していないようです。1970年のロングインタビューをまとめた書「サーク・オン・サーク」がえらく面白く、学べたのですが、そこで語られていたことが…
「ストーリーがあまりにひどくて、それを何とかしようとして終始した。」
…って以上。これしか記憶に残っていなかったらしい(笑)。
確かに、語り口にたどたどしさはあるし、89分の尺が意外と長く感じます。でもひどいものをここまで底上げしたのだとすれば、逆にサークの腕がスゴイってこと。…じゅうぶん面白いですからね!
単純記号化すれば愛とお金は両立するか?ってお話ですね。実際は両立するのだけれど、愛を込めて使わないとお金は生かせないってことでしょうか。
むしろ貧乏人の方が、いきなり大金を手にするとそれを殺してしまう辺りが皮肉です。まさしく猫に小判。逆に成金の方は、お金で愛を伝えたかったはずが…。
20'sの遅くに…とのテロップで始まりますが、世界恐慌の影がまるでない。その前夜なのだとすれば、オーバーナイト成金を経た主人公家族が今後、どうなるかが気になる。果たして愛があればいい、と言い切れるだろうか? (笑)
意外と、続きを想像させるのが狙いだったのかな、この結末は。
ローリング20'sなダンスシーンと禁酒法描写に20'sはあるものの、全体つらぬく能天気さにはむしろ50'sを感じます。制作当時の感覚が素直に出たのかな? そこ、とてもキモチよかったのですけどね。
<2014.4.2記>