汐宮キャロル

借りぐらしのアリエッティの汐宮キャロルのネタバレレビュー・内容・結末

借りぐらしのアリエッティ(2010年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

よく知ってる世界なので、あのサイズの小人にとって世界の危険さがすぐ伝わるのは本当に良かった。
ネコもカラスも人間も、全てが危険な存在なため、終始息が詰まりっぱなしの緊迫感だった。

小人たちの暮らしに、小人が作ったと思われる家具と、人間の道具をそのまま使っている道具が混ざっているのが面白い。最初の角砂糖を手に入れるための冒険の途中でそういうことが徐々に分かっていく構成が素晴らしいと思う。


ジブリらしく自然と人間の関わりにもかなり直接的に触れてきている。
使用人は卑しさから小人を捕まえようとし、貴婦人や坊ちゃんは気高さや同情から小人に手を差し伸べようとするが、どちらも小人にとってはいい迷惑となっている。人間のエゴによる自然への付き合い方は自然にとって悲惨な結末になることを主張しているのだろう。
そのスタンスは意外にも最後まで貫かれていて、小人たちは人間とは最後まで和解することなく人間の手の届かないところを探す旅に出るのだ。仮に人間に知られながら翔の家に住み続けたり、翔の手術の成否がエンディングで語られたりしたら一気に興醒めだったが、そういうこともなしにアリエッティたちの船旅を淡々と描いてエンドロールとなっている。

人間の活動で棲家を追われる小さい生き物たちを小さい生き物側から描くという構図は平成狸合戦ぽんぽこに似ているが、小さい生物側を擬人化した動物ではなく小人にしたのは新規性があり(人間である我々が)自然側に感情移入しやすい素晴らしいアイディアだ。
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