ヴェルヴェっちょ

イノセンスのヴェルヴェっちょのネタバレレビュー・内容・結末

イノセンス(2004年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

「秘すれば花」と云ったのは世阿弥だったか。 前作『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』から、さらに哲学的・思弁的になった本作。 圧倒的な映像美と緻密な世界観を描写する一方、核心部分は「秘されて」おり、観た者の解釈に委ねられるという深遠ときたら。

少佐こと草薙素子の失踪(前作のラスト)から3年後の西暦2032年。 巨大企業ロクス・ソルス社が販売する少女型の愛玩用ガイノイド“ハダリ”が原因不明の暴走を起こし、所有者を惨殺して自壊する事件が続発。 被害者の中に政治家や元公安関係者がいたことから、ロボットを利用したテロの可能性を考慮して公安9課で捜査を担当することになり、公安9課のバトーは、相棒のトグサとともに捜査に向かうが、“謎のハッカー”による妨害がその行く手を妨げる…。

まずもって、前作の主人公・草薙素子が不在で、「秘されて」いる。 素子の幻影を追うかのように捜査に没頭するバトーは、ひたすらに孤独である。 そして、夥しいまでに引用される箴言。晦渋な会話の数々は、主軸となるストーリーを圧倒するほど。
均一なるマトリクスの向こうの存在となった草薙素子。彼女とバトーはもはや共に歩むことはできないものの、本作は紛れもなく二人の恋愛じゃないか。
「孤独に歩め。悪をなさず、求めるところは少なく。林の中の象のように。」(釈迦の言行録から)