奏良

悪い子バビー/アブノーマルの奏良のレビュー・感想・評価

5.0
BBB's BLUES

バビーの人生が変わった瞬間、短時間で沢山あったと思うけど一番は初めてピザ食った時だと思う。外の世界で自分を受け入れる人間がいる事は想像していたはず。自分のみすぼらしさすら気付けないから。でも美味しい食べ物を分け与えてくれる事って本能的に最上の受容の形だし救いになるんだよ。それが相手にとってただの親切であったり不憫に思ったからだったりしても砂糖をまぶしたパンに牛乳かけた物を食べてたバビーには神に等しい敬意を示すべきと捉えるの人として素晴らしい。その女の子は胸がでかくないしタイプではないはずなのに敬意があるから不本意でも寝てるのかなとか考えてた。単なる言葉の獲得ではなく体験としてバビーの中に深く刻まれる感情が終盤にかけて多様になっていくの本当にすごい。
バビーが謝罪、否定を覚えていくのは想定内であったけど悲哀、無関心、冗談までできるようになれるあたりで凄い作品に直面しているの理解した。知性の次に取捨選択とユーモアを得るなんて。受け身だった男の子が一人の男性として自我を築き上げる成長譚はプレミアで観た「哀れなるものたち」や「籠の中の乙女」「ブリグズビーベア」などとそれぞれ似通っている。だが題材が似てるとはいえ、バビーが唯一違っているのは“偏見”という概念がそもそも無いからこそ優しい人間ではなくなった所だと思う。本来人を傷つける行為が正しいと誤認しているためではなく善意から来てしまうのは可哀想だけど、そのバビーに救われる人もいる=バビーが救う側になれた構図が本当に本当に好き。パパを知ったバビーが言葉の意味を自分で探す人生に称賛されたかのようなエンドロールが全てを肯定してくれていた。観られて良かった。
奏良

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