自宅で。
1973年のアメリカの作品。
監督は「フレンチグラフィティ」のウィラード・ハイクとその脚本を担当したグロリア・カッツ。
あらすじ
父親から謎めいた手紙を受け取った若い娘アリエッティ(マリアンナ・ヒル「サイキック・マーダー/透明殺人鬼の復讐」)は海辺の町「ポイント・デューン」を訪れるが、そこで彼女はこの町が地元の人々を死霊に変えてしまう呪いを受けていることを知る。
アマプラにて、ちょっと前におすすめ欄にピックアップされていて気にはなっていたところ、フォロワーの方々だったり、YouTubeチャンネル「ブラックホール」でわずかながらタイトルとして挙げられていたりと名前を聞く機会も増えてきたので、じゃあ観てみるかと勢いで鑑賞。
なんつーか、不気味な映画だ。
お話はあらすじの通り、所謂ジャンル映画的な作品なんだけど、ぶっちゃけ内容はあってないようなもの。
住む人々を死霊に変えてしまう呪いを受けた町に行方不明になった父親の行方を探すために訪れた主人公という感じの話から、それこそゾンビやらなんやらが登場してアクションする!みたいな感じかと思ったら、全然そんなことはなくて、大体は主人公アリエッティか、その父親の独白によるナレーションベースで話が進んでいく。故に全体的にかなり詩情的。
テンポも実にゆったりと、しかし徐々にヤバい方向に進んでいく感じで全体的なトーンも、もちろん内容自体もかなり暗めなため、ぶっちゃけ何度かに分けて観た際に夜中に観ると寝落ちしてしまったこともしばしば。
だから、退屈な内容と言ってしまえばそれまでなんだけど、なんつーか所々に挟み込まれるシーンそれ自体が実に不気味。
例えば、冒頭、薄暗い病院の廊下の奥からアリエッティと思われる赤いドレスの女の影がゆっくりと独白と共に近づいてきたと思ったら、その最後は絶叫と共に幕を開ける始まりから完全にホラー。
今作、以降もチラホラとキャラクターが叫び声や断末魔を上げるシーンがあるんだけど、とにかくその叫びがどれも金切り声と言っていいほど、嫌な感じで耳に残るんだよなぁ。マジで怖い。
で、アリエッティは町を彷徨う中で父親の家に辿り着き、そこで成り行きというか、ほとんど押しかけ状態で居座る優男トム(マイケル・グリア)とそのお付きの女性2人と奇妙な共同生活をすることになるんだけど。
その段階でアリエッティたちの周囲がどんどんおかしくなっていき、家の近くの浜辺では夜な夜な漁火をボーっと眺めにくる黒い服を着た集団が現れたりしてくる。
で、後半にかけては、なんといっても強烈なのが2シーンあって、トムのおつきの女性2人がそれぞれ死霊=町の人が変貌したゾンビたちにそれぞれ襲われるシーン。
まず、元モデルらしい、性格キツめなローラ(アニトラ・フォード「ロンゲスト・ヤード」)。共同生活を送る中で次第にトムといい感じになっていくアリエッティに露骨に嫉妬心を顕にして、それが耐え切れなくなり、家を出ていく事を決意したローラは夜な夜な1人で夜道を歩くことになるんだけど、途中で序盤でもものすごい不気味な存在として描かれていた目つきの悪いトラック運転手(ベニー・ロビンソン)のトラックに拾われるんだけど、そのトラックが荷台に夜空を何も言わずに見上げたまま硬直する男たちを乗せているわ、当の運転手も途中で、なんとどこからか忍ばせていたネズミを生のまんまむしゃむしゃと食べ始めるわで明らかにヤバい!とそのトラックを飛び降りて、そっからかなり長い尺を使って辿り着いた無人の町で1人の男を追ってスーパーマーケットにたどり着くんだけど、そこで見たのは生肉をむしゃむしゃ食べ漁る町の人々。ぎゃー!という断末魔と共に恐れ慄いて出口に向かうんだけど、当然のことながら開かない!後からやってきたゾンビの群れに囲われて哀れ食べられていくローラ…。
で、次は奔放な性格のトニー(ジョイ・バング)。彼女もまた街を彷徨い歩く中で、ある映画館にたどり着くんだけど、もうたどり着いた時点で受付は「close」、扉は閉ざされて、もう彼女の知らぬところで逃げ場はない状況下。で、トニーはあるクラシックの映画の劇場に入るとチラホラ人もいて、彼女はパクったポップコーンをむしゃむしゃしながら席に着く。で、映画を退屈そうに眺めるトニーなんだけど、そんな彼女の背後の扉から1人、また1人と小出しに人が席に着き始める。で、彼女が気付いた時にはもう遅い!彼女の後ろには無表情で血の涙を流しながら(呪いにかかった人は血の涙を流す)彼女をただ見つめるのだ。そして、彼女もまたものすごい叫び声を上げながら劇場の扉を開けようとするんだけど、開かない!サイドの扉ももちろん開かない!そして、劇場の真っ白なスクリーンの前で断末魔を上げながら、彼女もまたその最期は哀れ死人たちに喰われてしまうのだった…。
そんな感じでもちろんクライマックスも遂に父親と対面を果たすアリエッティなんだけど、その父親はすでに呪いにかかっており、最後は火をつけて殺さなきゃいけなくなるんだけど、またこの火炙りシーンも当時の撮影技術的に実に壮絶で印象深い。
そしてラストシーン、アリエッティだけがなぜか死霊たちに許され、生き残るんだけど、冒頭の病院の廊下のシーンがようやくその意味がわかって、ここで再度映されることを考えると多分彼女自身、気が狂っちゃったんだろうなぁ…。実に後味が悪く、不気味なラストだった。
そんな感じでもちろんジャンル映画的な興味・関心の高い作品ではあるんだけど、クラシックにしては実にホラー濃度が高い作品でもありました。