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シルバー・グローブ/銀の惑星の1000のレビュー・感想・評価

4.6
実録!こんな創世記は嫌だ。

ポーランド政府の検閲によって制作中止に追い込まれたといういわくつきの一作。無理もないというか、こんな映画の撮影現場を見ちゃった日にはソッコー通報モノですよ。ホドロフスキーのDUNE計画もそうだけど、こういう頭おかしい世界を実写化しようとする監督の野望は、狂気じみていて寒気がする。

先遣隊としてやってきた宇宙飛行士たち。船長は不時着で命を落とし、もう一人の隊員も怪我で息絶える。遺された3人が海辺で集落を築き、子供をもうけたところ……「地球よりも成長速度が速い」。近親相姦を重ねて次々に増殖していく子孫たちと、彼らが勝手に形成してゆく原始的文化。あまりにもおぞましく、グロテスクに再解釈された創世記は、その辺のホラー映画よりもよっぽどホラーだ。
「なんじゃこりゃ」と思う間もなく第2部が始まり、新たにやって来た地球人が救世主扱いされたかと思えば、謎の鳥人モンスターとの熾烈な戦争が繰り広げられる。救世主信仰はたぶんモーセとイエスをごちゃ混ぜにしているんだろうけど。てか鳥人、お前らどっから来たんだよ。

プロットも荒唐無稽ながらそれ以上に鑑賞者を殺しに来るのは、登場人物たちの形而上学的マシンガン独白。普通にしゃべることを忘れてしまったんかお前ら。ここから何かを読み取れる人もいるんだろうが、僕は哲学的思弁をオール無視することによって、かろうじて映画自体を楽しめました。

日本語で読める解説の少なさが、この映画の「手に負えなさ」を証明している。大抵のものは理解可能だし自由意志で処理できる、なんて思い上がったときにまた見直したい。
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