<概説>
人気俳優の親子の日々はゆるやかに進んでいく。数多の女性の影を匂わせながら、この華やかな日常はどこへ向かっているのだろうか。第67回ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。
<感想>
物語が平坦でも開幕と終幕の5分が最高です。
延々とどこに進むでもない、ただ周回する車両。
一定間隔をあけては観客の眼前に舞い戻ってきて、ああこのドライバーはどこにも行けないのだなということを分かりやすく示しています。
物語に起伏がないのもそこからすれば納得。
どこに向かおうという意思もなければ、どこに向かわなければならないという義務もない。漠然とした強迫観念がひたひたと這いよってはいるものの、それを体感するにも至らず。
志もなく目的もなく。かといって絶望もなく。
安穏とした生活は善であるはずなのに、刺激がなければ生を実感できない。そんな現代人の誰しもが抱えている、因果な苦悩を問題提起している気がしました。