ヒノモト

THE FALLSのヒノモトのレビュー・感想・評価

THE FALLS(1980年製作の映画)
3.6
東京菊川にあるミニシアターStrangerの『1980-2000年イギリス映画特集』から、『英国式庭園殺人事件 』や『コックと泥棒、その妻と愛人』などのピーター・グリーナウェイ監督の1980年の初長編監督作品を初めて鑑賞してきました。

“未知の暴力的事象(Violent Unknown Event)”略して“VUE”の目撃者たちである、“FALL”の綴りで名字が始まる92組の人物の経歴を映像で綴る辞典のように描くフェイク・ドキュメンタリーで194分の作品。

あらすじを読むだけでは?なんですが、“VUE”と呼ばれる主に鳥類に関連する様々な症状になってしまった人の中で、FALL○○のような名字の92人についての経歴を淡々と紹介していくだけの実験映像集という趣きで、その症状により鳥のように空を飛んだ事象やそうなったために不幸な最後を遂げた運命など、フェイクでありながら壮大な情報量で、不可思議な映像体験でした。

面白いかは別にして、フェイク・ドキュメンタリーとしては成立していて、捉えどころの無い事象について、千差万別の症状の出方、映像表現のその引き出しの多さは圧巻でした。

今作において、映像ごとののばらつきが雑多に感じてしまうところについては、後の作品「ZOO」において、様式美というかアートフィルムとして、完成度を高めていく前段階の作品として貴重な時間でした。
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