ユースケ

アウトローのユースケのネタバレレビュー・内容・結末

アウトロー(2012年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

音楽も台詞もなく、シボレー・ジェベルSSのエンジン音だけが鳴り響くカーチェイス。手持ちカメラやカット割りで誤魔化さず、キーシ・ファイティング・メソッドの破壊力を生々しく見せる格闘シーン。ロバート・デュバル、リチャード・ジェンキンス、ヴェルナー・ヘルツォーク、棺桶に片足を突っ込んだ三人のズルムケジジイたちの味のある演技。
一見すると1970年代のアクション映画へのオマージュを感じさせる渋いアクション映画ですが、その正体はオフビートな笑いが随所に散りばめられたアクション・コメディ映画。

運転免許を持たない設定を活かし、バス移動にこだわり、カーチェイス中にも関わらずバスを発見した途端にキメ顔で車を乗り捨て、サラッと乗客に混じり、サラッとバスに乗り込むシーンは乗客も協力的にならざるを得ないスマートさ。
携帯電話を持たない設定を活かし、公衆電話にこだわり、電話を掛けては切ってを三度も繰り返し、一方的にぶち切れながら住所を教えてもらうシーンは悪役も協力的にならざるを得ない理不尽さ。
身分や居場所を明かすものを一切持たない設定は笑いを生み出すための前振りです。

とにかく、鈍器を持った二人組のいかつい男とジャック・リーチャーがバスルームで繰り広げるドタバタ劇は必見。
バスルームの入口で詰まっちゃったり、攻撃が全然当たらなかったり、互いの攻撃で自滅しちゃったり、一見するとシリアスなシーンだけにどんな気持ちで鑑賞すればいいのかわからなくなってしまうと思います。

「姿を現わすのを待つほかない」と言われた次の瞬間に姿を現すオープニングの絶妙なタイミングの登場も、クライマックスの絶妙なタイミングで降り出す雨も、全てギャグなのです。

何はともあれ、トム・クルーズを堪能できる一本。泣きそうな顔で必死のカーチェイスに挑むトム。自ら武器を捨てドヤ顔でステゴロを仕掛けるトム。犯人の挑発に乗って犯人を射殺して己の正義を執行するトム。原作の設定では身長195㎝で巨漢のジャック・リーチャーを身長170㎝のちっこい身体でやり切ったトムに拍手を送りましょう。