プペ

トールマンのプペのレビュー・感想・評価

トールマン(2012年製作の映画)
3.0
とにかく『トールマン』というタイトル、果ては「ホラー」というカテゴライズ自体がミスディレクションだったという大胆な仕掛けには唸らされた。
″人″という生き物の善良さ、そしてその独善性を強烈に皮肉んだ刺激的な作品と言えるだろう。

興味があるならネタバレを知らないまま見てほしい。
そしてネタバレを知ってからもう一度見てほしい。

あらゆるシーンがダブルミーニングのごとく巧妙に練られており、いかにして自分が巧く騙されたのか、いかに自分が先入観をもってその場面を見ていたのか知ることになるだろう。
計算に富んだ実に良い演出だった。


映画は概ね2パートに別れる。
前半は、子供を奪われたジュリアが謎の人物を追うシーン。
後半は、いわゆるこの事件の犯人である″トールマン″の正体と、その目的だ。

やや演出過剰気味感は否めない場面もあったが、それがかえって子供を奪われた母の執念、母の強さに見えるから不思議だ。
息つく暇もなく子供を追い続けるジュリアの姿で画面には強烈な疾走感が溢れていた。
そして、後半パートではこの前半の疾走感から一気に急転し、今度は静けさが観客の心を攻めてくる。

″トールマン″はなぜ子供を浚ったのか。

その謎が明かされたとき、観客は恐らくトールマンに一定の理解を示すか、あるいは強烈な嫌悪感を抱くかのどちらかだろう。
だが、まさにそれこそがこの映画の着地点。
トールマンを正義とするか悪とするかに正解はない。
なぜなら、トールマンはそのどちらでもないのだから。
プペ

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