教授

空気人形の教授のレビュー・感想・評価

空気人形(2009年製作の映画)
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冒頭のセックスシーンは惜しいというか、ラブドールと、それを抱く男の性格を描写できる格好のシーンだったのだが…淡白に終わらせてしまった。あそこは腕を取って腰に回させるといったような描写を入れると、俄然、迫力が出たと思うのと、性的なシーンやなんかで少し描写の甘さが目立つ映画だなぁとは思う。


ストーリーはもうツッコミどころ満載というか、物語のリアリティラインがほぼ崩壊しているのでファンタジーとしての強度は普通に考えたらまるでない。
恐ろしいのはペ・ドゥナ自身の絶大な魅力と、「型の古い性欲処理玩具」としての存在という悲しい設定のみで成立させているところ。
彼女のその生まれ持った悲しみ(のようなもの)と、ペ・ドゥナの無表情の中にほんのり通う喜怒哀楽が非常にエモーショナルな演技に映る、それが実に感動的。
また偶然心を持ってしまったラブドールと、持ち主との恋物語でもないので…なんというか、悲惨極まりない。

バイト先のビデオ屋で破れてしまってARATAが空気入れるシーンなんかはエロ過ぎなんだけど、監視カメラのカットが映ったりして誰か入ってくるんじゃないかとヒヤヒヤした。

その中で群像劇風に入り込んでくる描写は「代用」という意味で繋がりを持たせてはいるが、やはり整理されていないので気になる描写ではある。
特に、主人公の物語とは特別接点もない為、余計にそう感じてしまう。

後半はもうグダリっぱなし。やはり群像劇としてはなんの帰結もなく。
ペ・ドゥナ演じるところのラブドールなりの「心を持った」=「生きる」の帰結としては、その群像劇的な物語へのスライドで、横道に逸らされたという印象。

それはやはり一本の物語としては破綻だと思ってもいいと思う。
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