佐藤でした

博士の異常な愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったかの佐藤でしたのレビュー・感想・評価

3.8
キューブリックの“近未来”は、すでにここからカッコイイ。円形の照明に照らされて浮かび上がるペンタゴン内の戦略会議室。全貌が掴めないガランとした薄暗い空間はどこかミステリアスで極秘情報がひしめいていそうだ。しかし首脳陣が話していることはまぁ~おバカ。

ーなんか今ぁ~、ソ連を核攻撃するって、基地から連絡きたっさ~
ーえ~、まじでぇ~。その指令って俺の許可いるんじゃね?
ーけど何かリッパー将軍がイカれちゃってぇ、立て籠もったらひ~よ
ーえ、その爆撃機って今から止めれないの?
ーあっち行くとき通信回路ぜんぶ切るんすよねいっつも。謀略電波とかあるんで。だから暗号ないと無理っス。
ーふ~ん。とりあえずソ連のひと呼ぼっか。
ー(ソ連大使きて)あ~オツカレっす~
ーこうでこうで今こんな感じなんすけど~
ーあ、ウチね、威嚇のために、攻撃うけた時に自動で爆発して全生物を絶滅させる「皆殺し装置」つけてるけど、逆に大丈夫?
ーえ、威嚇のためならなんで公表してないんスカ?
ーいや、言おうと思ってたの。来週あたり。
ー(一同)え~~~

いやペンタゴンの皆さんが全員チャラ男なわけではないんですけど、こう聞こえてくるほどアホな会話が繰り広げられていましたね~

かと言って全部がコメディになっているわけではないのは、やはりキューブリックがこだわった美術にあると思う。
クライマックスの空からの爆弾投下シーンなんか、50年前の作品だからと言って、チープに見えるどころか足がすくむ感覚を覚える。そして連続するキノコ雲。おバカな分だけ恐ろしや。

しかも爆撃機のディテールは、アメリカ空軍の協力が得られなかったにも関わらず徹底的な造り込みが成されていたため、美術チームがFBIの捜査対象にされたというから面白い。
佐藤でした

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