みむさん

東ベルリンから来た女のみむさんのレビュー・感想・評価

東ベルリンから来た女(2012年製作の映画)
4.0
静かながら張り詰める緊張感がハンパ無い。

ベルリンの壁崩壊の9年前の東ドイツが舞台。

女医であるバルバラには西ドイツに住む恋人に会うために西ドイツに脱出(?)しようとしたためシュタージに監視されているらしい。

すべての行動が監視されているためバルバラは誰とも心を開こうとしない。同僚のアンドレ医師でさえ、もしかしてシュタージの手先で自分を監視しているのかもしれない、そんな疑心暗鬼でいっぱいだから。

もう、周囲の人がすべて自分を監視しているのではないかと思ってしまう。

そんな状況の中での彼女の決断はこれまた無謀だなと思うと同時に、自由を求め愛する人に会うために行動に出るしかない!っていう決死の決断だったんだろうな。

そこへ患者の少女ステラが絡み、さらに緊張感が高まり、映画的には面白くなってくる。

ほんとに静かな映像・演出なんだけど、誰もが敵かもしれないという状況、失敗すれば今度こそ人生を棒に振るかもしれない決断、ワケアリな少女の叫びなど、一筋縄ではいかない状況が重なり緊張感がたっぷりで見ごたえアリ。

終始クールで感情を表に出さないバルバラが少女が絡んだあたりから少しずつ表情が見えてくるのも良い。

愛や自由を求めていた彼女だけど、あの決断は彼女にとってまた違う意味をもたらすのかもしれない。出会う人すべてに心を閉ざしていた彼女が下した決断、人間として医者としての心ゆえなんだろう。

「善き人のためのソナタ」思い出したなあ。

バルバラに好意を寄せるアンドレ医師が最後までどちらに転ぶのかわからないのも面白い。