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チチを撮りにのyoko45のレビュー・感想・評価

チチを撮りに(2012年製作の映画)
4.3
「どんな顔で死んでいくのか見て笑ってやりたい」「魚に食われてしまえ」、佐和を演じる渡辺真起子さんの言葉と表情の一つ一つがどれも素晴らしい。

 母(佐和)と娘たちの3人暮らし。父は娘二人が幼い頃に女をつくって家を出たきり。長女は僅かに父の記憶があり、次女はほとんど覚えていません。
 ある日、佐和から大事な話があると言われた姉妹は、川原を自転車二人乗りで家路に。佐和も帰宅し3人でお寿司を食べ、姉妹がマグロを取り合ったりしていると、佐和が娘たちに「お父さんがもうすぐ死ぬから会いに行ってほしい」「ついでにその顔を写真に撮ってきてほしい」と頼み事をします。
 当然とまどう姉妹、でも佐和と違い父を心底憎んでいるわけでもない。翌日、カメラとお見舞いの果物籠を持たされた姉妹は電車を乗り継ぎ父のいる田舎へ向い、葉月は電車の中で父の僅かな記憶を妹の呼春に語ります。ところが目的の駅についた姉妹は父が亡くなった連絡を受け・・

 ほとんど憶えていない父の葬儀、はじめて会った小学生の弟、ほとんど知らない親族たち、納棺、火葬、急に訪れた最後のお別れ。
 短い時間の中で姉妹は父の子であることを感じ、母の子であることを誇りに思い、父に会いにゆけと言った母の想いを知ることになるのですが、姉の葉月は可愛くてしっかり者、妹の呼春はマイペースでのんびり屋さん、この雰囲気の異なる二人のやり取りがじつに微笑ましいです。

 そして葬儀から帰り、川原に座った母と娘たち。娘たちが撮った写真と、ある物を渡された佐和の、渡辺真起子さんの言葉と表情が絶品です。

(メモ)
タバコ、マグロ、啖呵
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